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日韓関係は韓国の歴史を知ることで見え方が変わってくる

鈴木 開 鈴木 開 明治大学 文学部 専任講師

歴史を正しく理解するために重要な信頼できる資料

 歴史を正しく理解するひとつの方法は、その時代に作られた資料にあたることです。

 私がいま研究している資料に、清が朝鮮王朝を侵略した当時の資料として、「瀋陽状啓」というものがあります。これは、降伏した朝鮮王朝の王子が人質として、当時、清の拠点であった瀋陽に連れて行かれたため、王子に従ったお側の人たちが身の回りの出来事を本国に報告した記録です。

 人質というと酷い扱いを受けるようなイメージがありますが、「瀋陽状啓」を読むと、清の皇帝であるホンタイジが、当時、流行していた天然痘に感染しないように宮殿の外で野宿をしていて、王子に挨拶ができずに申し訳ない、と言っている記録があります。

 朝鮮の王子は、降伏した国の人質とはいえ、ちゃんと一国の王子として見られていたことがわかります。

 また、皇帝が野宿をするというのは意外かもしれませんが、当時の満洲族が半農半牧の暮らしをしていたことを知れば、皇帝の野宿もそれほど突飛なことではなかったのであろう、ということがわかります。むしろ、密になりやすい街の生活では、ウイルスなどに感染しやすいことを、おそらく経験則から、満洲族はすでに知っていたのです。

 コロナ禍で、三密防止が叫ばれていますが、為政者たちの感染症対策は、約400年前といまでも、あまり変わらないのかもしれません。

 この「瀋陽状啓」は、いまでは一般に知られていない資料になっていますが、実は、内藤湖南、稲葉岩吉といった明治期の東洋史学者たちが、当時のフロンティアであった満洲を知る資料として注目したものです。いまを知るには、歴史を正しく理解することが重要であり、そのためには信頼できる資料にあたることを、先人たちも重視していたのです。

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