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“アメリカの危機感”がトランプを大統領にした

井田 正道 井田 正道 明治大学 政治経済学部 教授

移民の増加がアメリカ像を崩す!?

 私の教え子であるアメリカ人の白人学生が、レストランで従業員同士の会話でスペイン語を喋っているヒスパニック系の従業員に対して、「“あなたの英語のアクセント(なまり)はわからない”と言ってやった」と話していました。つまり、ヒスパニックに対して、“ここはアメリカだ、英語を喋れ”、とストレートにではなく、皮肉をこめて言ったというわけです。アメリカに来ても英語を話そうとしない移民が増えることは、アメリカ人の保守的な感情を刺激し、苛立たせます。こうした保守的な白人層は世代に関係なく、実に多いのです。そして、この苛立ちは、自分たちが抱いてきたアメリカ像が崩れていく危機感につながっていきます。アメリカは、日本やヨーロッパの国々と比べると特殊な国です。もともと多民族が集まって国を形成しましたが、英語を喋るという点で国家としてまとまり、活力ある社会を形成することによって経済のみならず様々な分野で世界のトップランナーになったという歴史をもっています。そのアメリカに、人種の多様化だけでなく、英語を喋らないアメリカ人が増えるということは、アメリカというものが根っこから崩れてしまうような、かなりの危機感を抱かせるのです。それは、共和党の予備選挙で、トランプ氏を支持した人の最重要イッシュー(issue:論争点)にも現れています。「移民」「経済・雇用」「テロ」「財政」のなかで、「移民」が60ポイントで最も高く、日本でトランプ支持者の理由としてよく語られる「経済・雇用」は、「テロ」と並んで42ポイントなのです。つまり、移民問題は、雇用を奪われる問題や犯罪の問題とは別に存在するのです。トランプ氏が「アメリカを再び偉大な国にする」というメッセージや反移民を訴えたとき、保守的なアメリカ人の心をがっちりつかんだのは、“特別な国”アメリカが衰退していくことに対する危機感に応えたからではないかと思います。

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