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NAFTAの経験から何を学ぶのか、TPPへの示唆

明治大学 商学部 准教授  所 康弘

貿易協定の内容やその交渉過程をモニターする

 とはいえ、これを単にアメリカの自国中心主義の発現だと思ってばかりもいられません。同じく、私たち自身もTPPを「自国である」日本にとってのメリット、デメリット論のみで思考しがちではないでしょうか。かつてドイツの異能の国際政治経済学者A.ハーシュマンは、「大国と小国、富裕国と貧困国、工業国と農業国などの間の通商関係とは、経済力も政治力も隔絶した諸国家で繰り広げられる、自国や自国企業の利害を最優先しようとする、不均衡な闘争の場」であると指摘しました。彼の著書『National Power and the Structure of Foreign Trade(邦訳書『国力と外国貿易の構造』勁草書房)が出版されたのは、1945年のことです。

 以来、半世紀以上が経ちましたが、私たちは相変わらず貿易や貿易協定を自国の利益や損得勘定の観点から判断しがちな気がします。グローバル化が進む現代において、貿易の役割は重要です。だからこそ、複眼的視野を持って各国のもつ歴史、風土、経済発展の度合い、加盟国間の政治・経済的権力(パワー)の不均衡や階層性などを十全に考慮しながら、各国の国家主権を尊重し、アメリカ企業などを中心とした多国籍企業の利益だけではなく、人々の健康や安心・安全、環境を守り、互恵的な貿易・投資関係を構築していくことが大切です。

 私たちはTPPを契機とし、アジア太平洋地域諸国との相互理解を深めながら、各国が自由貿易の恩恵を対等、かつ最大限に受けることができる公正な貿易システムを構想するべきでしょう。そのためには、私たち市民もTPPの交渉やその内容に関心をもち、それが12ヵ国全てにとって持つ意味を理解し、逐一、モニターしていくことが必要です。ところが、今年4月の衆院特別委員会で交渉経過の文書が守秘義務契約を盾に、表題以外すべて黒塗りで開示されました。市民生活に大きな影響を及ぼす貿易協定であるにも関わらず、民主主義の根幹である国民の「知る権利」と逆行するこうした秘密主義に対しては、戸惑いを禁じ得ません。

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※記事の内容は、執筆者個人の考え、意見に基づくものであり、明治大学の公式見解を示すものではありません。

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