明治大学の教授陣が社会のあらゆるテーマと向き合う、大学独自の情報発信サイト

現代就職の問題を斬る ―一元的な価値観にとらわれている学生と企業への提言―

阪井 和男 阪井 和男 明治大学 法学部 教授

自分が所属する社会のイメージに縛られていないか

 ――就職を目指す学生の意識はどうなのでしょうか?

毎年、私は学生に2つ質問をしています。1つ目は「少しでも偏差値の高い大学に入ろうとしたか」、2つ目は「大学を出たからには有名企業のホワイトカラーか公務員になろうと思うか」と聞いています。1つ目の質問に対しては、8〜9割がイエスと答えます。2つ目は、6〜7割がイエスと答えます。それは、明治維新の直後に帝国大学ができて、帝国大学さえ出れば、庶民層から支配層に成り上がるというパスが初めてできた、そのときの意識であり、今も変わっていないのです。学生は、明治維新直後と同じ意識で、大学や世の中、自分の所属する社会のイメージをつくりあげているのです。
そもそも大学を選ぶにあたって、なぜ偏差値という一元的な価値観を簡単に受け入れるのでしょう。また、大学進学率が50%を超えている中で、昔の超エリートの意識をそのまま引きずって有名企業に入ろうとすることもおかしい。さらに、偏差値が成績だとすれば、現在の受験テクニックでは簡単な問題から解いたほうが偏差値は上がるわけです。しかし、最後に一番難しい問題が残ります。この解けなかった問題へのチャレンジなしに、合格できてしまうわけです。いま、企業や社会で起きている課題は複雑であり、そこの課題解決が求められているにもかかわらずにです。いかに偏差値教育が意味のないものかが分かります。
世の中は変化している、多様性が大事と言いながら、大学に対する価値観は偏差値しかないのです。その延長線上で、知名度や給料といった一元的な価値観で会社を見ようとするわけですね。
そういった一元的な価値観で見た会社に対して、今度は、自分を合わせなくてはいけないという発想しかもたない。それよりも、自分はどう働くとハッピーなのかを、もっと自分自身が考えなくてはならないと思います。面接で落ち続けたり、内定を取れなかったりする学生もいます。これは彼らにとって大きなチャンスだと思います。彼らは独自の道を歩まざるを得ませんし、自分の道に気付くことで強くなります。皆と同じように活動して、同じように有名企業に入るということは、ものすごいチャンスをふいにしているように私には思えます。

キャリア・教育の関連記事

ゲームのスキルは、その子の「資本」になる

2022.6.22

ゲームのスキルは、その子の「資本」になる

  • 明治大学 政治経済学部 専任講師
  • ヨーク・ジェームズ
理解度を高めるのは、説明を聞くよりも、説明をすること

2022.5.13

理解度を高めるのは、説明を聞くよりも、説明をすること

  • 明治大学 文学部 准教授
  • 伊藤 貴昭
地方公務員の働き方改革は社会改革につながる

2022.4.27

地方公務員の働き方改革は社会改革につながる

  • 明治大学 専門職大学院 ガバナンス研究科 教授
  • 出雲 明子
都市農業は、日本農業の実情を知るきっかけになる

2022.4.13

都市農業は、日本農業の実情を知るきっかけになる

  • 明治大学 農学部 教授
  • 岩﨑 泰永
文学作品には読者の想像力を喚起する仕掛けがある

2022.1.26

文学作品には読者の想像力を喚起する仕掛けがある

  • 明治大学 文学部 准教授
  • 能地 克宜

新着記事

2022.08.09

自分を活かせるライフワークを見つけよう

2022.08.05

KAMの導入によって企業と環境変化が理解できる

2022.08.01

ボルボ・カー・ジャパンのトップと語る 自動車業界の未来とブランディングの重要性

2022.07.28

自由に取り組んで、自ら学ぶ力を得よう

2022.07.27

幕末のパンデミックを日本人はどう乗り越えたのか

人気記事ランキング

1

2020.04.01

歴史を紐解くと見えてくる、台湾の親日の複雑な思い

2

2018.11.06

#2 日本政府の借金はなぜこんなに膨らんだの?

3

2019.07.31

万葉集に由来する「令和」に込められた、時代にふさわしい願い

4

2019.02.13

現代人が取り戻せず、潜伏キリシタンが250年間失わなかったもの

5

2021.11.26

インドから始まるイノベーションは、カオスから始まっている

連載記事