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18歳の大人たちに、糧となるのはしっかりとした法教育

明治大学 法学部 准教授 星野 茂

2018年6月、成年年齢を20歳から18歳に引き下げる改正民法が成立しました。若者の社会参加を促す狙いがありますが、一方で、ローンなどを自由に組むことができるようになるため、過重な債務に苦しむ若者が増えるのではないかと、懸念する声が出ています。しかし、そうした問題も含めて、日本の社会のあり方や制度を見直す良いきっかけになるという指摘があります。

18歳で成年とするとともに、法教育が重要

星野 茂 成年年齢を18歳に引き下げる改正民法が成立しましたが(施行は平成34年4月1日)、これは良い取り組みだと私は考えています。いままでよりも早く社会参加や政治参加ができるようになるのは、本人にとっても社会にとっても意義のあることです。

 一方で、18歳で契約等の法律行為ができるようになることから、本人保護に欠けるのではないかという懸念が出ており、法整備が必要との議論もありますが、それには疑問があります。

 例えば、改正前(現行)の民法では、女性だと16歳、男性だと18歳で婚姻することができます。つまり、未成年でも婚姻することができ、婚姻すると成年擬制が適用されます。すると、民法上、成年と同様に扱われることになり、親権を離れて自由に契約することができる、すなわち、契約社会に入っていくことになります。つまり、日本社会には、未成年者であっても成年として扱う制度がすでにあるわけです。

 この成年擬制の趣旨は、婚姻生活への親権者の干渉を排除し、生活を独立させ、かつ、自主的に営ませることにあります。すなわち、本人の意思や自主性を尊重することです。とはいえ、彼らは20歳未満の者です。彼らが独立して生活していくためには、何らかの支援は必要でしょう。それは保護や干渉ではなく、教育であろうと、私は考えます。

 今回、成年年齢が引き下げられ、婚姻に関係なく、一律に18歳で成年として扱われますが、ことの本質は同じです。契約社会の中で彼らの立場を守る制度を作るのではなく、自らを守るための教育に重点を置くべきです。

 「法と教育学会」は、小学校から法教育を行うべきだと提言しています。その中で、“取引”とはどういうことなのか、しっかり学び、判断能力を養うことが重要なのです。

 18歳から政治参加できることも、実は、同じです。そういう制度だけを作り、なんの学習の機会もないのでは意味がありません。自分たちで政治を行う、自分たちが政治家を選ぶということは、一体どういうことなのか、それをきちんと認識させることが大切であり、重要なのです。

 確かに、小学生や中学生に、各政党の立場の違いや主張を理解させるのは大変でしょう。であれば、もっと身近なところから学ばせる工夫が必要です。

 例えば、自分たちの学校の児童会や生徒会の会長を決める選挙を行うのです。立候補者は、全生徒に対して立ち会い演説を行い、自分が会長になれば何を行うのか“公約”します。校庭に花壇を作り、花を植えるとか、校則を見直すでもかまいません。“有権者”である生徒たちは、それを聞いてどう判断するのかを体験します。

 投票日には、実際の投票用紙に似せたものを作り、地区の選挙管理委員会から実際の投票箱を借りて投票するのも良いでしょう。自分たちの身近なところから模擬選挙をやることで、小学校、中学校の段階から政治に対する関心を養っていくのです。こうした学習の機会を増やしていくことが、今回の民法改正を有意義なものにしていくと考えます。

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