
2022.08.19
明治大学の教授陣が社会のあらゆるテーマと向き合う、大学独自の情報発信サイト
市街地に残された農地による都市農業は、農地が緑のある身近な自然環境と見なされたり、芋ほりやイチゴ狩りなどの収穫体験会などを通してレジャーや気分転換を提供する場として肯定的に捉えられてきましたが、その一方で、生産量が少ないことから食糧生産の面ではあまり重要視されてきませんでした。
しかし、都市農業を営む生産者の方々は、市街地という環境の中で農業を生産を行うにあたり、土埃が舞うことを防ぐ、臭いの強い農薬を使わない、農機具の騒音を抑えるなどの配慮をしつつ、狭い農地で収益を高めるために、有機栽培や養液栽培などの栽培方法、直売所の設置や地元レストランとのコラボなど販売方法、地域ブランドの加工品の製造など様々な工夫を行い、技術を導入しています。そのような努力の結果として、周辺の住民の皆さんの理解を得ながら、経営を継続しています。
このような状況は、低コストに安定的に作ることを優先してきた従来の農業になじんでいる消費者にとって、有機栽培をはじめ、安全で品質の高い作物の生産には多くの手間がかかり、コストがかかること、農業経営は様々な工夫が必要な仕事であることを理解するよい機会となりうると考えます。
すなわち、これまで農業に関わることがなかった皆さんが、農業に興味関心を持ち、知識を深めるきっかけのひとつに、都市農業はなりうると思います。
さらに、都市農業と同じような立地に黒川農場がある本学の学生にとっては、黒川農場は農業実習の場であるだけでなく、様々な学びが得られる場になっていくと考えています。
それは、日本の農業の課題は農業生産の技術を継承する者を育てることだけでなく、むしろ、農業の経営者を育成することにあるからです。