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「道徳科」導入の現在、その是非を超えて

明治大学 文学部 准教授 関根 宏朗

「道徳」に期待される可能性は大きい

これはあくまで私見ではありますが、教員を目指す学生たちと日々接しておりまして、相対的に真面目で優秀な学生が多いと感じています。彼ら・彼女らと話をすると、安易に昔ながらの画一的な教導へと向かうようなことはほとんどないだろうとつい楽観してしまいますし、またこれから「道徳的諸価値についての理解を基に」した教育を充分に展開していってくれるだろうという期待も膨らみます。しかしそれでもやはり、学生たちには、道徳教育における画一化の危険性について教育者はどこまでも反省的な注意を繰り返す覚悟が必要であると肝に銘じてほしい、そう常々考えています。

私が専門とする教育思想の分野においては、教育的な働きかけはすべからく恣意的な暴力性をともなうものであるという視点がすでに一般的になって久しいところです。すなわち教育とは無垢な子どもたちに対して“所与の規範”や“社会の常識”を押しつけるという強制をともなった、ある側面においてはきわめて暴力的な社会装置だという理解です。とはいえ教育は同時に子どもたちが生きていくうえで欠かせないものでもあります。九九の暗記はなかば強制的に行われますが、それはおそらく社会で生活していくうえであった方が良い知識であるし、また九九から始まって覚えた複雑な数的操作がときに論理的な思考力を磨いたり、さらには高尚な数学的な閃きの快感を得るまでに学びを深化させることもあるわけです。このように教育という社会的な営みをある種の暴力性をともないつつも社会の一員となるために不可欠ないわば「必要悪」であると複合的に捉えるならば、本欄でふれた道徳教育もまた本来的に非常に危ういものであることが理解されるでしょう。反面、この新しい「教科」は豊かな可能性に満ちてもいます。他の諸教科と連携してその教育的な働きかけの意義を深めることも十分に見込めますし、さらには教育一般そのものの基礎となる可能性さえ期待できるかもしれません。あるいはその一つの鍵こそが、複数的な価値にふれて自律的、対話的な姿勢を錬磨するという学びの構えなのではないでしょうか。

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※記事の内容は、執筆者個人の考え、意見に基づくものであり、明治大学の公式見解を示すものではありません。

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