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ノーベル賞の大隅先生のラボは自由と好奇心に溢れていた

吉本 光希 吉本 光希 明治大学 農学部 教授

オートファジーは生物のもつ巧みなシステム

オートファジーの過程
オートファジーの過程
 オートファジーとは、細胞内にある古くなって充分な機能を発揮できなくなったタンパク質やオルガネラ(細胞内小器官)を壊してアミノ酸にし、新たなタンパク質の合成に再利用するという細胞の働きです。細胞が活動する上で必要なタンパク質を自ら再生するという役割と、細胞内を浄化するという2つの役割があると考えられています。その仕組みは、まず細胞内に膜が現われ、その膜が古くなったタンパク質やオルガネラを取り囲み、そこに分解酵素をもった液胞(動物ではリソソーム)という小器官が融合することで、取り込まれたタンパク質やオルガネラが分解されてアミノ酸となり、新たなタンパク質を合成するために利用される、というシステムです。

細胞内にこうした仕組みがあるらしいということは、1960年代には知られていました。きっかけは、飢餓状態のマウスの細胞内に膜に包まれた小胞があり、その中に分解しかけのオルガネラやタンパク質が溜まっているのが発見されたことです。それはオートファジー(自食)と呼ばれるようになりましたが、その分子メカニズムはまったくわからず、研究は壁にぶつかった状態になりました。オートファジーという現象が確認されてから約半世紀を経て、その壁をブレイクスルーしたのが大隅先生です。

それでも、大隅先生もおっしゃっているように、まだオートファジーの仕組みのすべてが解明できたわけではありません。例えば、マウスを使いオートファジーを止める実験をすると、そのマウスは生後直後に死んでしまいます。その原因は、ミルクを吸えなくなるからです。おそらく、脳の細胞の中で浄化が行われないために不要物が溜まってしまい、そのために脳が正常に働けなくなるからだと考えられます。一方で、脳の細胞内だけでオートファジーを回復させてあげるとミルクを吸えるようになり生育できるようになりますが、様々な欠陥が生じ、早期に死に至ります。オートファジーが生命維持のためにとても重要な役割を担っていることは確かです。しかし、オートファジーが止まるとどうしてそのような機能欠損が生じるのかはまだ解明されていません。そして、それを解明するのは、生物のもつ巧みなシステムが起こすこうした現象に興味をもち、そのメカニズムを明らかにしたいと思う人の好奇心なのです。

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