北欧型サステナビリティビジネスとしてのサービスへ
北米と並んでサービス研究が進んでいる北欧は、大量生産、大量消費、大量廃棄を繰り返す経済構造への危機感を大きな要因としてサービスが発展してきました。
それは日常生活からも感じ取ることができます。例えば、私が研究のために滞在しているスウェーデンでは、購入決定に際して、使い切れることや、使い続けられることが重要な判断基準の一つになっています。
野菜や果物は量り売りで必要な量だけを買い求めることができます。また、洋服などは、多少価格が高くても長年着られるものを選んだり、セカンドハンドのものをうまく組み合わせて着こなしたりすることがスマートだと考えられています。
街を歩くと、多くの人が同じメーカのリュックを持っていることに気がつきます。それは流行ではなく、日本のランドセルのように小学校に入るときに買ったリュックを大人になってからもずっと使っている人が多いからです。
北欧諸国は、環境に負荷をかけながら経済的な繁栄を追求するのではなく、一人ひとりが生活の仕方を変えることで持続する社会システムを実現していこうとしています。
スウェーデンは経済的には小国なのですが、イノベーション指標や、一人当たりのユニコーン企業数などで世界のトップに位置します。
イノベーティブなアイディアを持つスタートアップは、アイディアを実現するための資金や、行政の協力、サプライヤーやパートナー企業、顧客などと一緒に持続的に価値を共創することで成功します。
このように、さまざまな組織や人々がネットワーク状につながり、サービスという価値共創活動をおこなうシステムを、サービス・エコシステムと呼んでいます。これまではサプライチェーンやバリューチェーンは一方向の線でしたが、これからのビジネスはネットワーク型のサービス・エコシステムになります。
サービス・エコシステムでは、サービスプロセスに参加する企業やユーザは、等しい立場のアクターであり、アクターたちが資源を持ち寄ることによって、全体としての価値を増加します。この仕組みがうまく機能すれば、アクターの誰かに負担が偏ったり価値を誰かが独り占めしたりするゼロサムゲームよりサステナブルで幸せな社会になるでしょう。
※記事の内容は、執筆者個人の考え、意見に基づくものであり、明治大学の公式見解を示すものではありません。