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サービスと価値共創

 「サービス」と聞くと、どんなことを思い浮かべますか? “サービス=無料!”と想像する人もいるでしょうし、“サービス=無形”という人もいると思います。

 美容院で髪をカットしてもらったり、遊園地で遊んだり、レストランで食事をしたり、ということが一般的な定義でのサービスでした。サービスという言葉は、有形財である物財に対比して無形財の意味として使われてきました。

 これまでのマーケティングは、有形財でも無形財でも、企業が顧客にいかにうまく売って、いかに利益を出すか、という考えが主流でした。企業が顧客に有形財や無形財を提供し、顧客がその対価としてお金を支払う、つまり、モノとお金の交換です。これをマーケティング分野では交換価値と呼んでいます。

 交換価値を技術ベースで作ろうとすれば、先ほどの「人の認知は、与えられた刺激の強さの対数に比例する」法則が働き、財はコモディティ化して、多くの家電製品がそうであったように価格競争に陥ります。

 交換価値に対して、20年ほど前から、有形財と無形財を別々に分けて考えるのではなく、どちらも価値づくりの資源と考え、さらに、「企業と顧客が一緒になって価値を共創する」という共創価値の考え方が世界的な潮流となっています。これが、新たなサービス定義なのです。

 この新たな定義でのサービス研究が進んでいるのが、北米と北欧です。

 北米では、有形財の利鞘が減ってしまったことから、より企業が利益をあげるための戦略としてサービス研究が発展してきました。例えば、製造業が製品を生産して単に販売するのではなく、製品が顧客の手に渡ってからの使用に焦点を置き、サポートするサービスをセットで提供するようなケースです。

 さらに進んで、ユーザに有形財や無形財を提供して単に対価を得るのではなく、新たな価値をユーザと共に創り、特にI Tを活用して企業もユーザも価値を得られる、シェアリングやサブスクリプションサービスのようなビジネスモデルは、産業界全体で見られます。

英語版はこちら

※記事の内容は、執筆者個人の考え、意見に基づくものであり、明治大学の公式見解を示すものではありません。

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