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近年、ESG投資や、ESG経営という言葉をよく耳にするようになりました。それは、SDGsという大きな流れの一環でもあるといいます。では、企業がESGに取り組むことで、その企業や社会、そして私たちの生活にどのような影響が現れるのでしょう。

国連の提唱から始まったESG投資

王 京穂 最近、世界が目指すべき方向性と17のゴールを提示したSDGsについては、一般にも広く知られるようになってきましたし、そのための活動も広がっています。

 一方、ESG投資というものへの関心も高まっています。ESG投資とは、企業には社会的責任(CSR)がある、という考え方から始まったものです。

 いわば、ゴールを提示して、そのための努力目標を掲げたSDGsに通じる位置づけとしてCSRがあり、そのための具体的な企業活動を促し、チェックする意図を持っているのがESG投資と言うことができます。

 では、ESGとはなにかというと、企業が取り組むべき非財務的な課題を体系化し、Environment(環境)、Society(社会)、Governance(企業統治)に分けたものです。

 例えば、企業は、CO2などの温室効果ガスの排出、廃棄物と環境汚染、水資源などの使い方、などのEの分野において、どのような取り組みを行っているのか。

 従業員の労働条件(健康、安全、男女平等など)、奴隷や児童労働、地域社会との関係、などのSの分野において、どのような取り組みを行っているのか。

 株主との関係、ビジネス倫理、取締役の機能、情報開示、地域社会との関係、などのGの分野において、どのような取り組みを行っているのか。

 これらESGの取り組みを、例えば、上場企業であれば統合報告書やサステナビリティ・レポートという形で開示するようになっているのです。

 現在では、これらの企業の取り組みをスコア化するESGの格付け機関も生まれています。例えば、アメリカのMSCI、イギリスのFTSEなどが有名ですし、日本でも、東洋経済新報が行っています。

 投資の際に、企業の統合報告書や、こうした格付け機関のスコアを基に判断するのが、ESG投資です。

 投資とは、リターンを得ることを目的として行うので、企業の業績や財務状況をチェックすることは当然ですが、そこにESGの視点も加えていくことを、2006年に国連がPRI(責任投資原則)を発表し、提唱しました。

 それは、SDGsの大きな動きの中で、企業の果たすべき責任を明確にし、その責任を果たしていく企業にはより多くのお金が流れるようにするという意図があります。要は、企業に流れるお金に色をつけるということです。

 当初、PRIという提案に賛同し、署名した投資機関は世界で200もありませんでしたが、現在では、約5000の投資機関が署名しています。日本でも、最大の投資機関である年金積立管理運用独立行政法人(GPIF)をはじめ、約300の機関が署名しています。

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