企業にとってもメリットがあるESG経営
一方、企業側はESGを意識した、いわゆるESG経営を行うことが求められるわけです。要は、企業は収益を追求していればそれで良い、というわけではないことになります。
さらに、ESG経営にはコストもかかるため、企業にとっては負担が増すという捉え方もあります。
では、ESG経営は企業にとっては負担であり、デメリットなのかと言えば、必ずしもそうではない。
まず、世界的にESG投資は増大しています。つまり、社会的責任を欠くような企業にはお金が回りにくくなっているのです。企業を持続させ、成長させていくためには、ESG経営は不可欠な課題になっていくと言えます。
実際、日本を代表するような伝統ある大企業でも、Governanceを欠いていたがために衰退を余儀なくされている事例は周知の事実です。
さらに、EnvironmentとSocietyも重要な課題です。日本では、1960年代から70年代に公害や車の排ガスが大きな社会問題となり、環境問題に関しては敏感ですが、近年、関心が高まっているCO2の排出量の削減などは、喫緊の課題です。
例えば、毎年のように大きな自然災害が各地で起こるようになっています。これが、温室効果ガスを要因とする気候変動によるものであるとすれば、官民一体となった対策が必要なのは明白であり、そうした課題に熱心に取り組む企業にお金が回るのは必然のことになると言えます。
また、男女の賃金格差問題や、女性の管理職の増加、従業員の健康管理や労災の低減なども、企業にとっては重要です。
最近は、こうした課題が数値化され、改善の方向に向かっているか否かが可視化されるようになっています。企業にとって生産性を高めることは非常に重要ですから、こうした数値を活用して、働く環境の改善に取り組むことは、やはり、必要不可欠です。
また、従業員にとどまらず、取引先や、消費者、地域社会もステークホルダーです。こうしたステークホルダーとの関係を良好に保つことも、企業の持続や成長にとって欠かせない要因になります。
逆に、サプライチェーンがクローバル化している現代では、海外の取引先が、例えば、人権問題や環境汚染などを行っていることが明らかになると、自社もダメージを受けます。そうしたリスク管理も非常に重要なのです。
つまり、ESG経営を行うことは、投資を有利にするだけでなく、自社のリスクをコントロールし、トラブルを未然に防ぐことにも繋がります。それは、長期的視野で見れば、企業の業績を安定させ、収益の拡大に繋がっていくのではないかと思います。
さらに、ESG経営は、企業を改革し、イノベーションを生むきっかけにもなるのです。
※記事の内容は、執筆者個人の考え、意見に基づくものであり、明治大学の公式見解を示すものではありません。