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補助金を巡る意識改革が必要

石津 寿恵 石津 寿恵 明治大学 経営学部 教授

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企業や団体、個人などに対して、国や地方自治体などは様々な補助金を出しています。しかし、それが適切に使われていないという指摘があります。それはなぜなのか。補助金は貰って「終わり」ではなく、受け取ることが「始まり」だという意識改革が必要ではないか。補助金の適切な利用のために会計が貢献できる、そういう方策があると言います。

後を絶たない「補助金不正」

石津 寿恵 国や地方自治体は、大企業や中小企業などをはじめ、個人に対しても、実に様々な種類の補助金等を出していることは、一般にはあまり知られていないかもしれません。

 しかし、このコロナ禍で、国民ひとりひとりに定額給付金が支給されたり、中小企業や個人事業主などに持続化給付金が支給される制度がつくられたことが大きく報道されたこともあり、広い意味での補助金に関心を持った人も多いのではないでしょうか。

 補助金とは、私たちの生活向上や、より良い社会への誘導などのための政策目的を達成するために拠出されるものです。

 ところが、「〇〇事業促進のための補助金」とか、「〇〇研究のための補助金」と、その使途が明確にされているにもかかわらず、残念なことに、そうした目的に適った適切な用い方がなされていないことも少なくありません。

 2つに分けて考えてみましょう。1つは、手続き上問題があり、お金そのものの不正受給といった場合です。新型コロナウイルス対策の持続化給付金をだまし取った詐欺容疑事件が世間をにぎわしていますが、それ以前から同給付金総額5.5兆円のうち不正受給として公表された事例が12億円分もありました。

 もう1つは、手続き上の問題はなく適正に精算されているものの、その後の活用の仕方に問題がある場合です。箱物行政という言い方がありますが、例えば、補助金を用いた文化施設の建設において、建設に係る補助金の精算は適正にされていても、その後の利用が少なければ補助金本来の目的、例えば地域の文化の振興という目的が達成されたとは言えません。

 両者に共通しているのは補助金を受け取ることに意識が集中しているという点です。補助金は税金を原資にしている、つまり「みんなのもの」ですから、広く捉えれば本来「みんなのため」(公益に資する)に活用するという役割を担うものです。それにもかかわらず、受け取った後には本来のそういった役割には関心が払われないことが少なくありません。

 まず前者については、会計の持つ報告機能が貢献できますが、結局、司直の手にゆだねる領域です。私が課題としているのは後者です。現在、建設後の活用には様々な事後評価が採り入れられていますが、私は更に、本来の役割に注意を払う意識改革のために会計の側面から貢献できる部分があるのではないかと考えています。

 なぜ、本来の役割への関心が薄いのでしょうか。それは補助金を国から貰う収益とみなす意識があり、金額の精算が終われば終了と捉えられがちだからではないでしょうか。公益サービスを提供することこそがその役割であり、その役割を果たすことは受け取り側の義務であるという本来の役割意識が低いということなのではないでしょうか。例えば補助金を受けた建物が完成すればそれで補助金の役割が完了したということでは、それはみんなのための公益ではなく、建設会社などへの私益にとどまってしまいます。

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