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企業会計を変えれば、日本に新たな社会インフラが構築される

山口 不二夫 山口 不二夫 明治大学 専門職大学院 グローバル・ビジネス研究科 教授

付加価値計算書は社会インフラに繋がる

 日本が高度経済成長にあった時代は、従業員の多くが正規労働者でした。正規労働者の人件費は従来の財務諸表から読み出すこともできるのですが、近年、急激に増えた非正規労働者の人件費はブラック・ボックス化しているのが現状です。

 すると、彼らがどれほどの低賃金で働かされているのかわからないし、パンデミックのような異常事態が起こると、真っ先に損害を被るのも彼らですが、実態を掴むことができない現状では、先に述べたように、給付金などの支援施策も不公正な分配になってしまうのです。

 近年、企業の社会的責任(CSR)が重要視されるようになり、CSR活動を謳う企業も増えてきました。しかし、CSRの意味や意義をよく理解していないため、CSR活動といっても曖昧なものになっている企業が多いように思います。

 であれば、まず、企業活動の証でもある財務諸表のあり方を見直すことです。

 付加価値計算書を作って公表すれば、自分たちが産んだ付加価値を、自分たちはどのように分配しているのか、その活動を社会に明らかにすることになります。

 つまりは、自分たちは、従業員にどれだけ分配しているのか、寄付などを通じて地域にどれだけ貢献しているのか、そうしたことを公表することは、自ずとCSRに適った活動に繋がっていくと思います。

 要は、非正規労働者を含めた従業員に対する分配や社会貢献費を増やすことになるであろうし、それが、社会的セーフティーネットを構築するための基盤、つまり、社会インフラにも繋がっていくと考えます。

 しかし、中小企業などにとっては、付加価値計算書を作り、公表することは厳しいかもしれません。彼らの存在意義は数値では表しにくい、やりがいであったり、地域との交流や貢献であることが多いからです。

 そこで、一定以上の規模の大企業において、付加価値計算書の公表を義務化することを考えても良いと思います。

 このように、企業の活動を可視化するために、それを数値化するルールを考えるのが会計学です。この考え方は、企業だけでなく、個人にも活用することができます。

 例えば、お金持ちになりたいとか、いざというときのために貯蓄しておきたいと思っている人は多いと思います。そのためには、家計簿をつけることが良いのですが、日々のやりくりを記帳し続けるのは大変です。

 そこで、年に一度で良いので、財産目録を作ることをお勧めします。すると、1年間、自分はどのように稼ぎ、どのようにお金を使ったのかが可視化されます。

 それは、自分の活動を見直すことになり、結果として、ムダを省いたり、もっとできることの発見になることもあります。それが、いざというときの必要な蓄えに繋がっていくのです。

 会計学の考え方は、「ファミリーインフラ」にも活用できると思います。

>>英語版はこちら(English)

※記事の内容は、執筆者個人の考え、意見に基づくものであり、明治大学の公式見解を示すものではありません。

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