
2023.02.03
明治大学の教授陣が社会のあらゆるテーマと向き合う、大学独自の情報発信サイト
近年、GAFAMなどの、いわゆるデジタル多国籍業の課税逃れが世界的に問題になっています。彼らは世界中で活動を行い、それぞれの国で、その法律に則って納税を行っていますが、その額が、収益に対してあまりにも少ないというわけです。
例えば、日本でインターネットによる通販を手がけているA社は、日本に工場はもちろん支店なども設置していません。日本にあるのは、仕入れた商品を保管する倉庫だけです。
すると、今の国際ルールでは、倉庫は法人税対象とならないため、A社の日本での利益に対して課税ができなくなります。
日本での収益を管理しているオフィスは別の国に設置されていて、しかも、そこは法人税が日本よりも格段に低い国なのです。
要は、多国籍企業である彼らは、いわば法の抜け穴を上手く利用して、課税を逃れたり、非常に低く抑えているのです。
また、彼らは、このパンデミックで典型的な特需の業界でもありますが、課税逃れの行為は変わっていません。
そこで、いま、世界各国では、デジタル課税などの法律を整備して、つまり、政治の力によって正当な課税ができるルールづくりを進めています。
しかし、そもそも、彼らが儲け過ぎといえるほどの収益を上げているのは、従業員を非常に安い賃金で雇用しているからだという指摘があります。
例えば、イギリスなどでは、当初、GAFAMなどを積極的に誘致しました。衰退した製造業に代わる新たな産業として、彼らに納税はもちろん、雇用の期待もしたのです。
ところが、彼らの本社のオフィスは立派で美しく、そこで創造的な仕事をしている従業員は高い賃金を得ていますが、現地には現場作業をするような施設しか置かれず、そこで雇用される人たちの賃金は非常に低く、結局、移民労働者ばかりになるのです。
では、どれほど安い賃金で、つまりは不当な収益を上げているのかを調べようとしても、先に述べたように、実質的な人件費を公表する仕組みがないため、調べることができないのが現状です。
なぜなら、資本主義においては、企業は株主に配当を出すことが重要であり、いまの財務諸表はそれを明確にするための作りになっています。そのため、人件費などは支出として扱われているのです。
しかし、企業が社会に大きな影響を及ぼすようになっている現代では、株主だけでなく、労働者に対する責任も非常に大きいのです。賃金を明らかにする付加価値計算書を公表することは、彼らの責務であると考えます。このことは、イギリスだけでなく、日本でも同じです。