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農作物の被害を減らす最新技術は植物自体から学んだもの

大里 修一 大里 修一 明治大学 農学部 准教授

自然界に学んだ遺伝子組換え技術

 このような植物の抵抗力をさらに高めるために、人が古くから行ってきたのが、交配による抵抗性育種です。病気に強い父方と母方を人為的に選抜して、より病気に強い品種を創ろうということです。

 しかし、病気に強い品種と美味しい品種を交配しても、狙ったとおりの品種ができないことがほとんどです。交配育種には、多大な時間と手間がかかるのです。

 いま、私たちが口にしている農作物のほとんどは、交配育種によって品種改良されてきたものですが、それは長い年月の試行錯誤の結果なのです。

 一方、100年以上前に、植物病理学者たちはアグロバクテリウムという菌が自分の遺伝子を植物に送り込んでいることを発見しました。その遺伝子が入ることで、植物はアグロバクテリウムが好むアミノ酸を作るようになるのです。

 この仕組みを人為的に利用する研究が始まり、1980年代に実現したのが遺伝子組換え技術です。要は、外部から持ってきた遺伝子、例えば、美味しさに関わる遺伝子などを植物の細胞の中に入れ、狙った品種を創る技術です。

 その結果、抵抗性遺伝子だけを目的の品種に導入する形質転換法も可能になりました。

 こうした技術に対して、不安感を抱く人も多いのですが、そもそも、子とは、父方と母方の遺伝子を交換して生まれるのですから、遺伝子組換えは自然界の現象でもあるのです。交配育種はその応用です。

 さらに、遺伝子を送り込み、意図的に遺伝子組換えを起こす生物も自然界に存在し、人はその仕組みを研究し、応用したわけです。

 遺伝子組換え技術は、近年は、ゲノム編集という技術へとさらに進化しています。

 これは、遺伝子の本体であるDNAを構成する、A、T、G、Cという4つの塩基の中からひとつを切り取り、遺伝子を狙った形に変える技術です。

 このゲノム編集に対しても危惧する人が多いと思いますが、この技術も自然現象の応用です。

 実は、生物には、DNAが損傷すると、それを修復する仕組みがあります。そのとき、もとのDNAとは異なる形に修復されることもあります。4つの塩基の並びのひとつでも換われば、それは異なる機能をもった遺伝子になるわけです。

 しかし、それも生物自身が行う修復の中の現象です。

 この技術を応用した新しい育種技術の開発が進んでおり、それは抵抗性育種にも活かされようとしています。

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