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アベノミクスを斬る ―「三本の矢」は的を射るか、日本経済は再生するか―

明治大学 専門職大学院ガバナンス研究科 教授 田中 秀明

低成長の原因究明、問題分析が欠落 英国にみる「成長戦略」の取り組み

田中秀明教授 「成長戦略」に感じる最大の疑問は、個別の政策が真に日本の成長に寄与するのか、よくわからないことである。たとえば、先進医療の保険外併用の範囲拡大、レセプトの電子化をすると、なぜ成長するのだろか。また、看板政策の一つとされる国家戦略特区の創設。そのアイディアは否定しないが、一部の地域のみでの規制緩和や取り組みで、なぜ国全体の成長が高まるのであろうか。他の政策においても、なぜ成長が高まるのか、疑問を抱かざるを得ないものが多くある。どうしてそうなるか。それは政策と成長の因果関係が曖昧であり、日本が成長できない問題分析が欠けているからだ。たとえば患者が、頭が痛いと訴えてきた場合、医者は頭痛の原因を突き止めて、それを取り除く処方箋を書くはずである。原因がわからない限り、病気を直せないからだ。他方、「成長戦略」は日本の経済が成長できない真の理由・原因を明らかにせずに、処方箋ばかりを書いているようなものだ。それはなぜか。成長戦略に書かれた政策は山のようにあるが、それは各省庁がこれから予算を取るためのウイッシュ・リストだからである。処方箋がないとお金、つまり予算獲得にならないのである。もっともらしく政策は整理されているが、その本質は各省庁の出したモノをホチキスで綴じたものである。予算を含めリソースは限られている。日本が成長できない問題をそれなりに明らかにし、それに優先的・集中的に資源を投入することが、「成長戦略」の本質でなければならない。
 2010年、英国が打ち出した「成長戦略」を紹介したい。まず4つのストラテジーが示された。すなわち、①G20諸国中最も競争的な税制を構築する、②英国を欧州で最もビジネス環境がよい場所にする、③より均衡した経済を作るために投資と輸出を喚起する、④欧州で最も柔軟性があり教育訓練された人材を育成する、の4つだ。それぞれの目標ごとに達成度を計測するKPI(Key Performance Indicator)(注)が導入されている。達成のための具体策は明確な日程が入った実施予定の政策であり、予算額も記載されている。要するに、日本の「成長戦略」のように、各省庁のやりたいことを羅列するのではなく、成長促進のために必要かつ実現可能な施策を示しているのである。各産業分野の競争状況や規制などについての現状分析もなされている。英国の「成長戦略」が成功するかどうかはわからないが、日本と比べて雲泥の差があることは明らかだろう。「成長戦略」のための財政出動や予算獲得のための「成長戦略」などは本末転倒なのである。

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