2024.03.14
- 2018年4月11日
- ビジネス
正規・非正規の格差是正と「同一労働同一賃金」
小西 康之 明治大学 法学部 教授最近、有期雇用の人たちが、無期雇用の人たちとの労働条件の格差の是正を求める裁判がマスコミなどでも大きく取上げられています。政府も、働き方改革関連法案を重要な政策と位置づけています。
労契法20条は有期と無期の労働条件の相違を解消する法律ではない
2013年に施行された労働契約法20条により、有期契約で働いている人と、正社員など無期契約で働いている人との間で、 期間の定めがあることを理由に、労働条件に不合理な差をつけることは禁じる、と定められました。この条文が設けられたことで、格差是正を訴えて訴訟を起こす有期雇用の人も出てきました。すでに、いくつかの事件では地方裁判所や高等裁判所で裁判例が出ています。ところが、ある事件では原告の訴えが一部認められたり、別の事件では原告の訴えがほとんど棄却されたり、また、一審と二審でまったく逆の結論となるケースもあります。なぜなのか。実は、この労契法20条は、有期雇用と無期雇用の労働条件に違いを設けることを禁じているわけではなく、あくまでも、「不合理な差」をつけることを禁じているのです。そのため、有期雇用と無期雇用で労働条件に差があっても、裁判では、それが不合理なものなのかどうかが問題になるわけです。ところが、不合理かどうかを予測するのは簡単ではありません。実際の事件を例に、裁判例の違いを見てみましょう。