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顧客と企業が協働して価値を生み出す ―協働型マーケティングの時代―

明治大学 専門職大学院 グローバル・ビジネス研究科 教授 上原 征彦

「集列体」から「共同体」へ

 経済学では需要と供給のバランスで価格が決まるとされている。いわゆる市場メカニズムによって人々が結びついている「集列体」になっている。しかし、マーケティングは、市場メカニズムに依存すると自立性が失われる。そこで別の要因でもって顧客と「共同体」をつくろうとする。マーケティング理論の中に、消費者は購買理由を数少ない要因に帰属させるという「帰属理論」がある。顧客が購買理由を価格に帰属させると企業は脆弱化する。価格競争で疲弊している企業などがその好例だ。価格以外で顧客に好まれるもの、価格以外のものに購買理由を帰属させることが重要なのである。たとえば優れたスーパーマーケットの3割は固定客だといわれているが、この固定客は購買理由を価格に帰属させていない。スーパーマーケットに限らず、企業は顧客を“固定客化”しなければならない。そのために必要なことは、市場メカニズムに依存するのではなく、市場に“関係性”を導入することなのである。売り手と買い手が交流する仕組みの導入ともいえる。そこで生まれるのが「共同体」である。企業が生き延びていくためのマーケティングは、企業と顧客による「共同体」の創造を目指すべきだ。

日本の農業にマーケティングを

上原征彦教授 私が、最近注目している時事問題の一つがTPPだ。特に問題視されているのが農業分野だろう。私の考えでは、関税撤廃による貿易自由化は、世界の大きな流れであり、参加、不参加を議論する時期ではない。時代に適応したものでなければ、自ら打ち壊して改革すべきだと考えている。アメリカの農作物は各州が強力なマーケティングを展開しており、巧みな戦略で世界市場に臨んでいる。アメリカ自体がマーケターといえる。今のままの日本の農業では、アメリカに太刀打ちできないかもしれない。そこで私が言いたいのは、古い制度が外圧で壊されるより自ら壊した方が得策だということである。長年、日本の農業は顧客と結びついていなかったと思う。モノが欲しい人に望み通りの商品が届き、満足を届けるという一連のプロセス、すなわちマーケティングがなかった。今までやってきたことを破壊し、新しいものを創り出す英断が求められている。日本の農業はマーケティングを導入して、海外と競争を展開する中で確実に差別化を生むチャンス、勝機を見つけていくべきだ。
 最後に、私が社会へ提言したいことは、「もっと知的になろう」ということ。これまで日本人の生活は“高収入・高費用”を目指してきた。それは高収入を目指して多忙になる生活の自転車操業であり、その中で知性を培う余裕はない。“低収入・低費用”に転換することで、生活にゆとり、豊かさが生まれ、知性を培う時間もできるし、多くの人々と交流する時間もできる。“低収入・低費用”を実現するには人々が助け合うコミュニティの実現が必要である。それはこれまで話してきたマーケティング理論とも通じるものである。“実需”を生み出すには企業と顧客の協働が必要であり、関係性構築のためには交流が必要不可欠である。その「共同体」を実現する生活のあり方の一つが、“低収入・低費用”の生活スタイルではないかと考えている。

※掲載内容は2013年11月時点の情報です。

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※記事の内容は、執筆者個人の考え、意見に基づくものであり、明治大学の公式見解を示すものではありません。

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