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タックス・ヘイブンの情報秘匿の殻を破ったパナマ文書

下村 英紀 下村 英紀 明治大学 専門職大学院グローバル・ビジネス研究科 教授(退任)

今年(2016年)4月、タックス・ヘイブン(租税回避地)の企業情報や取引情報などが記載された機密文書がドイツの新聞社に流出したことが報道され、世界中が大騒ぎになりました。しかし、このパナマ文書に記載されているからといって、そのすべての企業が脱税などの違法行為を行っていると決めつけることはできないといいます。では、タックス・ヘイブンの問題点は何なのでしょうか。

タックス・ヘイブンは小国の苦肉の戦略

下村 英紀 そもそもタックス・ヘイブンとは何なのかというと、日本語では「租税回避地」などと訳されますが、必ずしも厳密な定義があるわけではありません。通常、税が非常に低率か、もしくはほとんどかからない国や地域のことを指します。よく知られているところでは、イギリス領のバージン諸島や、バミューダ、ケイマン諸島がありますが、アジアでは香港やシンガポールなどをいうこともあります。これらの国は小さな島国であったり、非常に小さな地域であったり、特別な産業もなく、経済を成り立たせていくのが困難なところです。そこで、会社設立や商取引に関する規制を少なくし、ビジネスが自由にできる環境を整えることで、世界中から富裕層や大企業を招き、会社登記の登録料など、税以外で収入を得ることを国策としているのです。ですから、そこに日本の企業が例えば子会社を設立したからといって、それだけで非難することはできません。

実は、タックス・ヘイブンが怪しいものと見られがちなのは、単に税が低いということではなく、情報の機密性が高いことなのです。誰がそこに会社を設立したのか、所有者は誰なのか、その金融取引は誰の資金なのか、などといった情報がまったく公表されないのです。つまり、タックス・ヘイブンに資金が入ると、その後どうなったのかまったくわからなくなる、ブラックボックスのような構造になっています。これが、タックス・ヘイブンの本質的な問題であるといえます。実際、犯罪資金や表に出せない資金をマネーロンダリング(資金洗浄)する目的で、タックス・ヘイブンに通すことが世界中で問題となっています。ですから、ブラックボックスの中の情報を公表したという点で、パナマ文書が世界中の注目を集めているのです。しかし、決してタックス・ヘイブンはマネーロンダリングとして活用されているばかりではありません。会社が簡単に設立できたり、規制が少ない投資ファンドがあったりと、ビジネスがやりやすく大きな収益が見込めるために、タックス・ヘイブンを利用する個人や企業も多いのです。

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