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タックス・ヘイブンの情報秘匿の殻を破ったパナマ文書

下村 英紀 下村 英紀 明治大学 専門職大学院グローバル・ビジネス研究科 教授(退任)

納税者として関心をもつことが大切

5月25日、タックス・ヘイブンのケイマン諸島に日本から74兆円の証券投資が行われていることが財務省から発表され、大きく報道されました。これは、日本とタックス・ヘイブンとの結びつきがいかに大きいかを物語っています。この報道に接し、日本の様々な企業が資産隠しや過度な節税を行っていると思った方も多いかと思いますが、ケイマン諸島は日本と租税条約を結んでいるので、おそらく、この74兆円が生む所得には正当な課税がなされると思います。

このように、租税条約の締結は、いままで秘匿されブラックボックスだった情報の透明化を向上させています。日本は、ケイマン諸島をはじめ、バハマ、バミューダ、英領バージン諸島や、香港、シンガポールなど、タックス・ヘイブンといわれる国や地域とも租税条約協定を結んでおり、5月23日にはパナマとも条約を結ぶことが発表されました。今後は、さらに条約締結国を広げるとともに、条約締結後は、実際に情報提供が実行されるように取り組んでいくことが重要です。

パナマ文書が注目されたことをきっかけに、日本企業のタックス・ヘイブンへの投資が大きく報道され、多くの市民が関心をもつようになったことは非常に良いことだと思います。タックス・ヘイブンを利用した租税回避が横行すれば日本の税収は減り、結果として、所得税や消費税の税率を上げたり、公債の発行が増えたりするなど、納税者の負担が重くなるのです。この関心を一過性にするのではなく、今後も企業などの過度な節税行為について関心をもち続けてもらいたいと思います。市民の関心が高まれば、過度な節税や租税回避は会社の信用の失墜につながるとの認識を、経営者がもつ契機になるように思います。将来、振り返ってみたときに、パナマ文書が、納税の透明性を高めるきっかけとなった、といわれるようになることを期待しています。

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※記事の内容は、執筆者個人の考え、意見に基づくものであり、明治大学の公式見解を示すものではありません。

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