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2026.02.12

災害は“社会の弱点”を映し出す:日本が世界と共有すべき防災知と、途上国から学ぶ視点

災害は“社会の弱点”を映し出す:日本が世界と共有すべき防災知と、途上国から学ぶ視点
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日本は長年、堤防整備や耐震基準の改定など、先端技術を活かした防災対策に取り組んできました。しかし、その知見は世界に十分共有されていないのが実情です。一方で、途上国には日本が学ぶべき地域の連携力があります。防災政策と国際協力の両方に携わる専門家が、日本の防災の“いま”を解説します。

大災害が頻発する一方で「防災の効果」は見えづらい

石渡 幹夫 近年、世界各地で災害が連続して発生しています。フィリピンやベトナムでは大規模な洪水が繰り返され、ミャンマーやトルコでは甚大な地震被害が生じました。日本国内でも水害や地震が発生し、地域の暮らしに深刻な影響を与えています。世界全体の災害による被害額は上昇傾向にあり、特に都市化と経済成長が同時に進む途上国ほど、その増加が顕著です。

 災害は、すべての人を等しく襲うわけではありません。現実には、高齢者や女性、障害者、貧困層、少数民族など、もともと社会的に弱い立場にある人びとほど被害を受けやく、復興から取り残されかねないことが世界各地の事例によって明らかになっています。

 2011年の東日本大震災でも、亡くなった方の3分の2以上は60歳以上の高齢者でした。特に避難が難しかった方々が犠牲となり、宮城県では障害のある住民の死亡率が全体平均の約2.5倍に達したというデータもあります。

 また、住宅環境の差も被害の偏りを生みます。家賃の安い古い木造住宅に住む低所得層や学生などは、地震による家屋倒壊の被害を受けやすいと指摘されています。このように、平時の社会構造がそのまま非常時の被害分布に反映される現象は「災害弱者」という概念で語られます。

 こうした格差を縮小するためには、まず社会全体の防災力を底上げすることが欠かせません。公共政策が果たす役割は非常に大きく、住宅の耐震化、インフラ整備、防災情報の周知、地域社会の防災能力の強化など、被害を減らすための方策は数多くあります。

 たとえば、2024年の能登半島地震では6000棟以上の建物が全壊し、1万8000棟以上が半壊しました。しかし倒壊した住宅の多くは1981年以前の旧耐震基準で建てられたもので、2000年以降の現行基準に基づく建物の被害は極めて少なかったと報告されています。耐震基準がいかに被害軽減に効果を発揮するかが示された事例といえます。

 一方で、途上国では政府機関の能力不足で耐震基準が機能していないケースも少なくありません。貧しい国ほど、防災よりも教育、医療、道路、水道といった喫緊の課題への投資が優先されがちで、「いつ起きるかわからない災害」への備えが後回しになります。これは政策選択の難しさを象徴する問題でもあります。

 さらに、防災投資の効果が可視化されにくいという構造的な課題もあります。堤防やダムを整備しても、災害が発生しないかぎり「被害が出なかった」という事実は実感されにくい。たとえば堤防があるから洪水が起きなかった場合、その貢献は目に見えず、「費用に見合う効果があるのか」という疑念が生じやすくなります。いわゆる「スーパー堤防」をめぐる議論は、まさにこの典型例といえるでしょう。

 国や県は治水事業の費用対効果を公表していますが、一般の人に十分浸透しているとは言いがたいのが現状です。行政がどのような目的で整備を行い、どれほどの効果が期待されるのか、その情報発信は今後さらなる工夫が求められます。

英語版はこちら

※記事の内容は、執筆者個人の考え、意見に基づくものであり、明治大学の公式見解を示すものではありません。

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