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2025.02.20

ジェンダー、アイデンティティ、SDGs…ファッションを通して考える現代社会

ジェンダー、アイデンティティ、SDGs…ファッションを通して考える現代社会
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衣服は語られ、伝えられていくことで服飾流行、すなわちファッションになっていきます。それが流行だとわかるような形で伝達され、広くシェアされなければ流行現象にはなりません。「ファッションは時代を映す鏡」と言われるように、ファッションに目を向ければ、時代ごとの社会や課題が見えてきます。

ファッションの変遷は、規範的ジェンダー像からの解放の歴史と関連する

高馬 京子 日本におけるファッションは、モードという言葉でも表されます。モードとは、フランス語で流行という意味です。フランスには今なお流行を牽引しているイメージがあるかと思いますが、フランスを中心とするファッションの変遷は、「こうあるべきだ」という規範的ジェンダー像からの解放の歴史と深く連関しています。

 18世紀末のフランス革命で打ち出された人権宣言は男性のための宣言であり、そこで掲げられたナポレオン法典においても女性の権利は認められていませんでした。特に上流階級の女性たちは非常にきついコルセットを人の手を借りて着用し、動きやすいとはいいがたいドレスを身に纏い、そのファッションは男性の富の象徴だったのです。

 しかし第一次世界大戦を経た1920年代、コルセットからの解放とも言われる転換期が訪れます。例えば、フランスのファッションデザイナーである、ポール・ポワレはコルセットを使わないドレスをデザインし、ココ・シャネルは柔らかくて安価なジャージー生地を婦人服に取り入れ、女性が買いやすく動きやすいファッションを世に送り出しました。

 1960年代になると、イギリスのファッションデザイナー、マリー・クヮントの打ち出したミニスカート、またフランスのデザイナー、アンドレ・クレージュがパリ・オートクチュールでミニスカートを提案したことにより、フランス、そして世界でミニスカートの流行を巻き起こします。60年代後半には、20世紀初頭に続く第二波フェミニズムが広がり、それまで許されなかったピルの使用や中絶など、女性がさまざまな権利を獲得していきました。それとともにミニスカートも世界へと広がり、女性が解放されてく時代へと進んでいったのです。

 女性が強さを前面に出すようになった1980年代には、男性にスカートを履かせるようなファッションデザイナーも出てきました。日本でも男女雇用機会均等法が1985年に制定され、バブル景気も相まって、女性が社会進出をはじめ、自己実現を求めながら消費を牽引する時代になっていきます。その後はデジタルメディアも普及し、ファッションにおいて世代や性別がクロスオーバーされる世の中へと移り変わっていきました。

英語版はこちら

※記事の内容は、執筆者個人の考え、意見に基づくものであり、明治大学の公式見解を示すものではありません。

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