
人生のターニングポイント恩師に教わった「現場に根ざした中小企業研究」
教授陣によるリレーコラム/人生のターニングポイント【102】
大学三年生のとき、現・明治大学名誉教授の百瀬恵夫先生と出会い、指導教官となっていただき、大学院までお世話になったことが、私のターニングポイントであったと思います。もし、百瀬研究室での経験がなければ、私は研究者を目指していなかったでしょう。
地域経済・産業の問題の解決策を探求している過程で、長寿企業の数が世界一で、しかも中小企業の割合が高い日本における固有の経営スタイル、考え方、手法の解明と普及が必要不可欠であることに気づきました。これが今の私の研究につながっています。
そもそも、経営学という学問は、もちろん机上でコンピュータに向かってデータ分析をしたり、先行研究の論文を精読したりもしますが、やはり実際に企業や事業協同組合といった現物に直接あたって調査研究活動も行うことも重要です。
百瀬研究室では、当時の百瀬先生が取り組んでいらした調査研究から生じる課題を、われわれ学生も一緒になって考えていくという方針でした。たとえば、北海道のある地域産業振興計画を立てるので、そのために必要となる人口データや事業所データ、それから地域の主力産業の経営状況等を調べてデータベースを作りなさい、というような課題です。
大学院の頃は先生が実際に取り組んでおられた現場につれていっていただいて、現地の社長さんや、その地域の中小企業振興に携わる経営指導員といった方々に、自分たちで考えて作成した研究成果物を発表する機会を与えてもらいました。
もうかれこれ40年近く前の話になりますが、百瀬先生が教えてくださったのは、今で言うPBL(問題解決型学習)であり、現場に根ざした研究の重要性を体得する機会となりました。そうした実践経験を積ませていたただいたからこそ、今があるのだと思っています。
私からビジネスパーソンの方々にお伝えしたいのは、何から何まで実現することはできませんが、せめて自分自身が一番興味関心を持っていることで世の中を少しでも良くしようと常に思いながら生きるということ。そうすれば、その関心と関連する人や本との出会いが、きっとあなたのターニングポイントになることと思います。
まずは、自分が関心を持つテーマについて深く学び、そこから得た知識を現場に適用することで、価値を生み出す道を探ってみてください。
※記事の内容は、執筆者個人の考え、意見に基づくものであり、明治大学の公式見解を示すものではありません。