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「仕事のないときは勉強すればいい」という言葉で心が軽くなった
2025.01.22

人生のターニングポイント「仕事のないときは勉強すればいい」という言葉で心が軽くなった

リレーコラム
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教授陣によるリレーコラム/人生のターニングポイント【99】

若い頃、建築家の先生からもらった一言が、現在も指針になっています。それ自体が転機になったわけではありませんが、常に勉強し続けることの大切さが、スッと心に入ってきた瞬間でした。

建築家って、タレント業のような人気商売でもあるんです。かつて僕には、その若さからさまざまなメディアに声をかけられ、調子に乗っていた時期がありました。その頃、自分が助手として務めていた大学に著名な建築家の先輩がいて、「今はいい気になっているだろうけど、若いからチヤホヤされているだけであって、四十代にもなったら仕事が来なくなるぞ」って言われたんですよね。

それで急に不安になったわけではありませんが、心に引っかかり、その方よりさらに歳上の建築家の先生に「どうすればいいんですかね」って、世間話ぐらいの感覚で相談をしたんです。すると、「そんなの勉強すりゃええんや」って返された。仕事がないときは勉強をすればいい。そうすれば自分が成長し、仕事がついてくるからと。とてもシンプルな回答でしたが、自分にとっては印象深く、いまだに大事な言葉となっています。

たとえば僕は今、英語の勉強に力を入れているんです。2021年に、ヴェネチア・ビエンナーレ国際建築展のキュレーターを務めたことで、海外からレクチャーや展覧会のオファーをもらうことが多くなったからです。2023年にはスイスの大学で教える機会もいただきました。とはいえ僕自身、留学の経験もなく、英語は得意じゃない。だから通勤中にシャドーイングをするなど、あらゆる隙間時間を英語の勉強に費やしています。すると1日1~2時間ぐらいは勉強できて、英語が上達してきているのを実感しています。

40歳を超え、僕もミッドライフ・クライシス(中年の危機)に悩ませられる年齢です。こういったとき、英語のように確実に成果がでる勉強をすることは、精神衛生上もかなりいいんですね。勉強をすれば違う自分になれて、また違ったところに活躍の場ができる。いくつになっても自分が変われることを体感できたのは、あのときの言葉が響いていたからこそだと思います。僕の場合、いいタイミングで外国とのコネクションに恵まれましたが、それもコンペで勝ちとったもの。若い頃から学び続けた結果でもあります。

「自己変革」みたいな概念は好きじゃないんですが、それ以上にマンネリが好きじゃないという気持ちが強いのかもしれません。古い建物が何度もリノベーションされ、どんどん変わっていくような感覚が僕は好きだし、そちらの方が自然だと感じます。自分自身も変わっていった方が自然ですし、そっちの方が面白い。学ぶことによって成長を実感できることは、どんなお仕事をされている方にとっても大切なのではないでしょうか。

※記事の内容は、執筆者個人の考え、意見に基づくものであり、明治大学の公式見解を示すものではありません。

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