
人生のターニングポイント学びの場での「弱い絆」が、「いい偶然」を広げてくれた
教授陣によるリレーコラム/人生のターニングポイント【93】
私のターニングポイントは、社会人大学院に進学したことです。昭和から平成に変わる頃の民間企業在職中に、筑波大学の経営・政策科学研究科で学んだことが、現在の教育の場へと導いてくれました。
大学では文学部で心理学を専攻し、卒業後は大手量販店に就職。東京で独り暮らしをしながら働き、三十代前に、新聞で筑波大学の社会人大学院の募集広告が目に留まります。それ以前から放送大学で好きな授業を受講するなどしていたのですが、少し経営的なところも学びたいと考えるようになっていた頃でした。当時は顧客サービスの部門にいたため、企業と消費者の相互作用を体系的に研究したいと考え、夜間と土曜に通い始めました。
そこでは研究の面白さを教えてくださった先生方が多く、同級生も含めた出会いがキャリア転向のきっかけとなったのです。修了後は産業能率大学の総合研究所で、リサーチやコンサルティングの業務を経験します。企業研究でインタビューに行くなかで、実務家の方が語ったことを経営戦略や組織心理学などの概念と紐付けるなど、理論と実践がつながっていく面白さを体感。それらを伝えたいと、教職に就きました。
当時の社会人大学院の同級生は1クラス30~40人いたなか、およそ3分の2が教員になっています。現在、明治大学の同僚となっている先生もいるなど、後につながるネットワークが拡がりました。このことは毎年、本学の経営学研究科のマネジメントコースや専門職大学院のグローバルビジネス研究科の最初の授業でも語っています。学びの場は、キャリア論でいう「弱い絆」や「プランド・ハプンスタンス」、つまり「ゆるいつながり」や「計画された偶然」を広げてくれる大きな機会となってくれるのです。
キャリアを形成するなかで偶然を自分で準備することはできないのですが、偶然を起こすための種をまき、対処するための力を蓄えることは可能です。いい偶然を広げるためには、ネットワークづくりが欠かせません。社会人大学院に限らず、日々の仕事や生活のなかでも、つながりを考えて行動することは大事です。すでに社会人でいらっしゃる方々も、ぜひ学ぶことの楽しさを忘れないでチャレンジし、一つひとつ出会いを大切にしていただければと思います。
※記事の内容は、執筆者個人の考え、意見に基づくものであり、明治大学の公式見解を示すものではありません。