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「他者のため」を考えた時、流れが変わった人生

森田 直美 森田 直美 明治大学 経営学部 准教授

考え方や価値観が変わるほどの出来事に遭遇したら、それは成長へのチャンス。明治大学の教授陣が体験した人生のターニングポイントから、暮らしや仕事を好転させるヒントを探ります。

教授陣によるリレーコラム/⼈⽣のターニングポイント【4】

私の人生が変わり始めたのは、「自分本位の研究」をやめた時です。

それまでの私は、専門である平安時代の文学や伝統文化について、「自分の好きなこと、知りたいことだけをとことん追究したい」という、今思うとシンプルながら、少し傲慢な考えで研究を行っていました。

そのうちに仕事の上で思うようなステップアップができなくなり、このままでは研究者として世間から消えてしまうのではないか、という危機感を持つ状況になってしまったのです。

そこで、自分に足りないものは何だろうと考えに考えて出した答えが、「私の研究は、私一人の力ではなく、多くの方々に導かれ励まされて育てていただいた。しかし私は他者にたいした貢献をしていない!」ということでした。

そこからは、「私の研究対象の素晴らしさを一般の方にも伝えると同時に、消えつつある文化の存続に貢献しよう」という思いを強く抱くようになりました。

そう考えたころから仕事の依頼が急に増え始めたのです。さらに一昨年からは、本学の経営学部に在籍することになり、古典文学や伝統文化に関連する科目を担当しています。

私の研究とは畑違いの経営学部の学生に、伝統文化や美術の講義ができているのも、「他者のため」というスタイルを守っているからこそだと思っています。

また、本学に入ってからは伝統文化や工芸に関わる地方の方とお話しする機会が増え、多くの知見を得ることができました。「文化や技術の保存・継承問題の解決にも尽力するぞ」という覚悟もできました。

今、自分が望んでいた研究ができているのも、自分の専門分野で「他者のため」を考え、行動したからなのでしょう。自分のことだけを考えていると、人も仕事も寄ってこないのだと実感しています。

社会人の方も何かうまくいかない時は、「得意なことを他者のために役立てたい、貢献したい」という意識を真剣に持ってみると、人生の流れがいい方向に変わるかも知れませんよ。

※記事の内容は、執筆者個人の考え、意見に基づくものであり、明治大学の公式見解を示すものではありません。

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