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興味関心を深めて体系化させれば「道の駅」も学問になる
2024.03.13

人生のターニングポイント興味関心を深めて体系化させれば「道の駅」も学問になる

リレーコラム
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教授陣によるリレーコラム/人生のターニングポイント【60】

私のターニングポイントは、奈良県吉野町での都市・山村交流の活動を通して「道の駅」と出会ったことです。以来20年間、「道の駅」を拠点とした地域活性化の効果についての研究に携わるようになりました。

大学の4年間は経済学部で、マクロ経済学や計量経済学を専攻していました。学部で学ぶなかで日本の食料自給率の問題に関心を持つようになり、神戸大学の大学院に進学して農業経済学を専攻。修了年度の1995年1月には、阪神・淡路大震災を経験します。あの衝撃から、地域活性化に目を向けるようになり、縁あって吉野町でNPOを設立して林業の振興に関わるようになりました。NPOの活動として山村交流のプログラムや林業体験のツアーなどを企画しているなかで関わり始めたのが「道の駅」でした。

「道の駅」に対し、それまでは道路に付帯する休憩施設のような認識だったのですが、その実態を知るにつれ、地方創生の要となり得る可能性を感じました。「道の駅」の素晴らしさを広く認めてもらうためには、学術的な理論立てが大切。そのためにはやはり、アカデミックな知見が必要です。再び大学院へと戻り、「道の駅を拠点とした地域活性化の効果」をテーマに研究を進め、2018年に博士号を取得。さらに2019年に『道の駅の経済学−地域社会の振興と経済活性化−』(勁草書房)を上梓し、道の駅の学術的価値を示すことができたと考えています。

地方創生政策は、各地域の特色に応じた活性化策を推進することを前提としていますが、人口減少や高齢化など、どの地域も同じような課題を抱えています。各地域によって状況は異なるものの、社会科学という「科学」の観点から普遍的な法則を見出せば、どのような状況の地域にも適用可能な制度や仕組みを構築できるのではないか。そう考え、研究活動を続けています。

社会科学や人文科学も、自然科学と同様、「科学」の一分野です。科学とは、観測される様々な現象・事象から、生起する原因を見出し、反復可能な普遍的法則を導き出す学問であるといえます。どの分野においても、その分野で起きている様々な事柄に関心を持ち続けることで、やがてそれらが頭の中で醸成され、そこから普遍的法則を導き出すことができるようになるのではないかと考えます。それには日常生活で感じた経験が役に立つかもしれません。

社会科学に携わる身として特に大切だと感じることは、社会で起きている様々な事柄に目を向け、関心を持ち続けることだと思います。このことは、新しい価値の創造が求められる、科学を含むすべての分野に当てはまることだと思います。新型コロナウィルス感染症の世界的拡大のあとの、ロシアのウクライナ侵攻、イスラエルとハマスの衝突など、世界情勢は混迷を極めており、私たちは今大きな転換期にあるといえます。身の回りで起きているあらゆることに関心を持つことで、一人ひとりの世界が大きく広がっていくと確信します。

※記事の内容は、執筆者個人の考え、意見に基づくものであり、明治大学の公式見解を示すものではありません。

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