
人生のターニングポイントブログを書いて開けた研究者の道
教授陣によるリレーコラム/人生のターニングポイント【59】
私のターニングポイントは、大学4年生のときに始めたブログです。
私は、ロースクールを経て研究者になった第一世代にあたります。東京大学の法学部を卒業し、制度開始から間もない法科大学院に進みました。
当時、修士課程や博士課程を経由して、あるいは東大の場合は学部からそのまま助手になるというルートが、研究者養成としては一般的でした。
一方の私は、ロースクール制度に切り替わるタイミングで、先行者がいない状態のなか、未来がほとんどわからないまま研究者を目指すことになりました。
そんなとき、学部生の最後の年から書き始めたのが、「カフェパウゼの日記」という名前のブログでした。今でいうX(旧Twitter)のつぶやきのような感じで、自分の勉強のことやバイトのこと、進路についての悩みなどを書いていました。
すると、ありがたいことに、親切な先生や大学院生たちがブログのコメント欄へ集まってくれて、おすすめのゼミを教えていただいたり、研究会に誘っていただいたり、個人的に応援メッセージをくださったりしました。
学部生の段階では見えていなかった情報に、ブログを書いたおかげで接する機会ができました。その意味ではイレギュラーな形で研究者への導線ができたと思っています。
しかも、学生からの質問に答えるようなブログを始めたところ、大学教員としてのキャリアが始まってすぐ、出版社の編集者さんのお誘いでブログ記事の連載を始めることとなりました。
それらの内容を基にして、『カフェパウゼで法学を 対話で見つける〈学び方〉』という学習者向けの本を出版しました。学部生の時には意外とわからなかった勉強方法やレポートの書き方などを、対話形式でやさしく書いています。
学部生段階でみえていることは、ごく限られたもの。あのとき知っていれば他の道も選べたかもしれない……。そんな、「知らないがゆえに進路が潰れる」ということを極力なくしたいというのが、私のポリシーです。
ブログなどを通じた諸先輩方の力添えなくして、私は研究者になれませんでした。自分も役立つことを少しでも後輩に伝えることで、その恩を返したいという気持ちです。
※記事の内容は、執筆者個人の考え、意見に基づくものであり、明治大学の公式見解を示すものではありません。