
人生のターニングポイントウォール街で就職、できなかったからこそ今がある
教授陣によるリレーコラム/人生のターニングポイント【55】
これまでターニングポイントは沢山ありましたが、やはり大学院の博士課程に進学したことは私のキャリアに大きな影響を与えました。
私は、大学卒業後は銀行に就職し、現在の研究テーマでもある日本株のアナリストとして日本株の調査を担当していました。
転職したり、MBAを取得したりしているうちに、ウォールストリートで米国株式の調査をしたいと考え、29歳の時に米国に留学し、ニューヨークのヘッジファンドでインターンとして働く機会を得ました。
しかし、ちょうどその時に金融危機が起こり、現地では就職できずに帰国します。そして帰国はしたものの、日本でもアナリストの求人はないに等しく、いったん就職はあきらめ、博士課程に進学しました。
これが私にとっての転機となりました。動機としては研究者になりたいとか、研究を極めたいといったものではなかったので、これから研究者を目指そうとする方たちにとっては、少し不純な動機のように感じるかもしれません。
社会人大学院だったので、景気が良くなれば就職し、仕事と学業を両立しようと思っていましたが、そのまま3年間就職できず、修了の時期を迎えました。今のように「女性の活躍」などと言われる前で30代の女性の再就職は厳しく、かつ雇用状況も非常に悪かった時代です。
しかし、博士課程を修了してからは運よく大学への就職が決まり、そこで落ち着く間もなく明治大学への就職が決まりました。そして現在は実務の経験を活かし、研究ではアナリストの研究、教育ではアナリストの育成をしています。
人によっては希望の職種・企業に就職できないとか、一時的に希望とは異なる仕事をしているとか、上手くいかないこともあると思います。
しかし人生とは不思議なもので、短期的な成果だけを求めるのでなく、長期的な成長を目指していると、後からチャンスがやってくるということがあります。その意味では企業が行う投資や研究開発、企業経営そのものと相通じるものがありますね。
キャリアを形成する上で壁にぶつかった時はいったん視点を変えて、今の仕事に集中したり、できる仕事に就いて努力したりすることで、将来希望の仕事に携わる機会が与えられるのではないかと思っています。
※記事の内容は、執筆者個人の考え、意見に基づくものであり、明治大学の公式見解を示すものではありません。