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真の教育者である指導教授が現状へと導いてくれた
2023.12.13

人生のターニングポイント真の教育者である指導教授が現状へと導いてくれた

リレーコラム
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教授陣によるリレーコラム/人生のターニングポイント【49】

私のターニングポイントは、明治大学の政治経済学部で安藏伸治先生のゼミナールに入ったことです。

1~2年次にはアルバイトに明け暮れ、語学の授業がある日にだけ大学へ来るような日々でした。そのなかでたまたま同じ曜日に開かれていたのが、安藏先生による社会科学方法論の授業です。もともと政治番組を見たり社会学系の書籍を読んだりするのが好きだった私にとって、それらの考察を統計学も含めたデータの分析によって実証できることが面白く、人口学を主軸とする安藏ゼミへと進みます。

人口学は、人口の規模・構造・変化を性別や年齢別などの属性別に観察することによってそのメカニズムを分析する、社会科学の基礎ともいうべき学問です。安藏ゼミでは3年次の春学期に、500ページほどある社会調査に関する英書を毎週およそ30ページずつ読み、5,000字のレポートを提出してプレゼンテーションを行います。自宅で一日中、英書を読んでいると頭がパンクしそうになるため、地元・横須賀の海に行って読み込んだこともありました。

夏のゼミ合宿では、英書の残り部分のプレゼンと課題作成に徹夜で取り組み、50ページほどにまとめて提出。その秋に、先生が手がける少子化対策関連の調査プロジェクトに参加させていただいたことが、研究者への第一歩になりました。

安藏先生は毎週の課題や論文を細かく見て、ときには赤ペンでの直しと指摘で真っ赤にして返してくださいました。教員になり痛感しましたが、このような丁寧な教育は誰でもできることではありません。また、安藏先生のゼミは、院生を含めた先輩も指導をしてくれ、上が下の面倒を見るという教育システムも確立されていました。

ゼミに入って薫陶を受け、本当に世界が変わりました。高いハードルを乗り越えた経験と、先生からのサポートが、今の私を形づくってくれています。先生は、学会や研究会などで一流の研究者と引き合わせ、縁をつくるような指導をしてくださいました。おかげで先生にご紹介いただいた人たちと、今も一緒に研究ができています。

安藏先生は礼儀にも厳しい、真の教育者でした。その後、明治大学付属明治高等学校・中学校の校長にもなり、今年度からは学校法人国本学園の学園長として、幼稚園から高校までの校長の指導をされています。私も今年度から、安藏先生のあとを引き継ぎ、人口学のゼミを受けもっています。信念をもって人を育て、つないでいく。そんな先生の姿勢は、どの社会でも大切にするべきものだと感じています。

※記事の内容は、執筆者個人の考え、意見に基づくものであり、明治大学の公式見解を示すものではありません。

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