Meiji.net

属する組織の始まりに思いを馳せてみよう
2022.07.07

人生で影響を受けた人物属する組織の始まりに思いを馳せてみよう

リレーコラム
  • Share

教授陣によるリレーコラム/人生で影響を受けた人物【80】

私は岸本辰雄(以下敬称略)を挙げたいと思います。この「Meiji.net」をご覧いただいている方や明治大学に関心をお持ちの方なら皆様ご存知の明治大学の創立者の一人です。

岸本は郷里、鳥取藩の推薦を受けて貢進生として大学南校(後の東京大学)に入学。1872年には新設された司法省明法寮(後の司法省法学校)に一期生として入った俊才です。

さらに公費でフランスに留学、パリ法科大学よりフランス法律学士の称号を受けました。帰国後、判事として働くかたわら、志を同じくする宮城浩蔵、矢代操と共に明治大学の前身・明治法律学校を設立したとのことです。

明治法律学校では当初、法律を学びたいという学生のために無月謝で授業を行っていたそうです。また学校の財政が厳しい時には個人で借金をしながら経営したといいます。

正直なところ同時代、教育に尽力した福沢諭吉や大隈重信などに比べ、やや地味な印象を持つ方が多いことも否めません。

しかし「権利自由」の志のもと、向学心ある若者たちのために自身をも削りながらできる限りのことを行ってきたバイタリティ溢れる人物でした。岸本の成し遂げたことの大きさは、140年たった現在、明治大学を知り、支持してくださる方が日本中にたくさんいるという事実が如実に表しています。

私はリバティータワー23階の岸本辰雄記念ホールのドーム型天井真ん中の光穴を見上げるたびに、創立者への感謝の気持ちと、最澄の「一隅を照らす」という言葉が頭に浮かびます。これは各自が与えられた立場の中で最善を尽くす、というような意味ですが、岸本の教育に対する姿勢そのものだと思うからです。

日本には700以上もの大学がありますが、私は今、縁あって明治大学の教壇に立たせていただいています。そのことに感謝しながら、これからも教育者、研究者としてできることをしていきたいと思っています。

皆さんも、悩みを持った時や人生の“これから”を模索する時など、誰もが知るような、書籍で取り上げられているような、“偉人”から学ぼうとされることが多いのではないでしょうか。

もちろん、それも大いにヒントになるとは思いますが、もっと身近な、自分が所属し、生かしてくれている会社や組織を創られた方に思いを馳せてはいかがでしょうか。

創業者、創設者が何を思って、どのようにして、その組織を作リ上げたのか。その過程や理念を理解することで、自分の立ち位置が明確になったり、新たな目標が見つかったり、次の一歩が踏み出せたりするかもしれませんよ。

※記事の内容は、執筆者個人の考え、意見に基づくものであり、明治大学の公式見解を示すものではありません。

  • Share

あわせて読みたい