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地道でも “源”から、理解するようにしよう

稲葉 肇 稲葉 肇 明治大学 政治経済学部 准教授

歴史に名を残す偉人から、カリスマ性のある著名人、その道を究めた学者まで。明治大学・教授陣に影響を与えた人物を通して、人生やビジネスに新たな視点をお届けします。

教授陣によるリレーコラム/人生で影響を受けた人物【78】

指導教員だった伊藤和行先生を挙げないわけにはいきません。残念ながら昨年逝去されましたが、学部、修士、博士とお世話になった恩師です。

私が携わっている科学史というのは、科学の“歴史”ですので、原典を原語で読むということがすごく重要なのです。先生には、その地道な作業がいかに大切かを教わりました。

原典を原語で読むとは、例えばアインシュタインを研究するのならドイツ語で、17〜18世紀の科学を研究するのならラテン語やギリシア語で読まなければならないということです。

とても骨の折れる作業ですから、案外多くの人がしていない。だからこそ一文一文着実に読み込んでいけば、新たな発見があるかもしれないよ、と先生は仰っていました。

欧米の科学史研究などでも、欧米人より丁寧にしっかりと文法まで緻密に紐解いていけば、それが大きな武器になることがわかったのです。

それに、昔の科学者がどんなことを考えていたのか、有名な理論や概念はどのようにして生まれたのか。原典を原語で読むということが、その好奇心を満たしてくれる一番素直で、一番の近道ですから。

そのように関心を持ったり、源流を辿っていったり、理解を深めたり、そういう地道な努力は科学史に限らず大切なことだと言えるのではないでしょうか。

ビジネスマンの皆さんも、なぜ自分がその仕事を選んだのか、その仕事の意義は何なのか、どこに惹かれて今の会社を選んだのか、原典ならぬ原点を時折見つめ直しても良いかもしれません。

そうすることで新たなモチベーションが生まれたり、仕事に対して違ったアプローチできるようになったり、何か新しい発見があったり、そこからまた世界が広がっていくのではないでしょうか。

※記事の内容は、執筆者個人の考え、意見に基づくものであり、明治大学の公式見解を示すものではありません。

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