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教授陣によるリレーコラム/人生で影響を受けた人物【40】

私が学生時代に影響を受けたのは、アンリ・ルフェーヴル(1901-91)というフランスの思想家・社会学者です。大学三年生の時、たまたま入った書店で『空間の生産』という著書に出会い、それまでのモノの見方を大きく変えられました。

空間を生産するのは誰かと問われれば、多くの人が建物の図面を引いて形にする建築家やデベロッパーなどの専門家と答えるのではないでしょうか。

ところがルフェーヴルは、この『空間の生産』の中で、専門家に限らず、一般の人たちも空間を“使う”ことで、空間を生産できる主体だと論じていたのです。

例えば大学の教室では、机や椅子の配置、教員と学生の距離やコミュニケーションによっても、空間のあり方は変わります。この場合、その時、その場かぎりの出来事や状況を含めた教室という空間を生産しているのは、教員と学生だと言えるわけです。

私もこの本を手にするまで、都市や建築について考えるのは、建築家や都市計画家など、どちらかといえば理系の人たちの仕事だと思ってきました。

そのようなモノの見方を覆し、社会学を専攻していた私でも、都市や建築について考えることができるのだと後押ししてくれたのが、ルフェーヴルの『空間と生産』という本だったのです。

そして今でも読み返す度に、新たな発見や気づきがあるのです。

ソーシャルメディアなどのデジタルメディアには、同時代の人とリアルタイムでコミュニケーションできる面白さがありますが、本をはじめとするアナログメディアには、私にとってのルフェーヴルがそうであったように、時空を超えた他者と対話ができるという醍醐味があります。

ただし、影響を受けるということには怖ろしい一面もあります。自分のモノの見方がその本や著者の考えに捉われてしまう場合があるからです。そのため、いかに距離をとるかも重要になってきます。

このことも、時空を超えた他者との対話に含まれます。影響を受けるとは、影響を与えてくれた他者の生をも自分なりに生きることなのかもしれませんね。

※記事の内容は、執筆者個人の考え、意見に基づくものであり、明治大学の公式見解を示すものではありません。

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