
2023.03.23
明治大学の教授陣が社会のあらゆるテーマと向き合う、大学独自の情報発信サイト
歴史に名を残す偉人から、カリスマ性のある著名人、その道を究めた学者まで。明治大学・教授陣に影響を与えた人物を通して、人生やビジネスに新たな視点をお届けします。
影響や感銘を受けた人はたくさんいますが、進化経済モデルを開拓したリチャード・ネルソンとシドニー・ウィンターという経済学者を挙げさせていただきます。
なぜなら、彼らの書いた本や論文に出会ったことが、その後の自分の研究を方向づけたと思うからです。
例えば、お二人の共著に「経済変動の進化理論」という、進化経済学のルーツのひとつになった本がありますが、ダーウィンの進化論のような考え方を経済の変動に当てはめて述べているのです。
突然変異を繰り返し生物が多様な進化を遂げたように、人間の必ずしも合理的ではない行動が経済の変動、発展につながっているのではないか、という理論。
こういった考え方は以前からありましたが、彼らはその著書の中で、コンピューターを使ったシミュレーションなどを通してロジカルに提示してみせたのです。
この本を手にした80年代前半、経済学そのものになんとなく違和感を感じていた私は「こんな見方があるのか!」と衝撃を受け、さらに「自分もこんな研究をしていきたい」と思いました。
皆さんもこれまでの方法でうまくいかない時は、突然変異を起こして全く違う方法を・・・なんて気軽にはできませんよね。生物の突然変異だってその多くが進化には繋がらないわけですから。でも、組織全体でそれを行うなら、話は別です。
ですから会社のトップや管理職の方は部下に様々な挑戦をさせてあげて欲しいのです。そうすればいろいろなアイデアが出て、多彩な方法を試すことができる。会社としてはそのどれかが成功すれば良いのです。
そして一度失敗した人にもまたチャンスを上げれば良いと思うのです。多くの人が試行錯誤しながら何度も挑戦できる。そういう文化を育むことが経済や社会の発展に繫がるのではないでしょうか。
※記事の内容は、執筆者個人の考え、意見に基づくものであり、明治大学の公式見解を示すものではありません。