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物事を一度分解し、成り立ちについて考えてみよう

鈴木 雅博 鈴木 雅博 明治大学 情報コミュニケーション学部 准教授

いまやクリエイティブな職種に留まらず、多くのビジネスパーソンにとって発想力や企画力は必須のスキル。ライバルを一歩リードするのに役立つヒントを、知の先達である明治大学・教授陣の言葉から探ります。

教授陣によるリレーコラム/アイデアの泉【49】

私は以前、教員養成に携わっていたことがあるのですが、「道徳」が教科化されることになったとき、養成の現場では授業や評価をどう行ったら良いかという、ハウツーの部分に焦点が当てられがちでした。

しかし、研究者の立場からすると、そもそも道徳教育を教科化するのはどういうことかを考えることが大切なのです。

決まったことをどう上手くやるのかではなく、そのこと自体に問題がないのかどうかに目を向けることが実践に携わる方々にも求められるのだと思います。

ただ、社会の現場では、批判に対して「代案を出せ」という言葉が殺し文句のように使われることがあります。

しかし、代案を出さなくても、いま取り上げられている提案について「それは良くないですよね」と指摘するのも建設的な意見と捉えるべきです。

新たな問題を引き起こしかねないことを性急にやるより、現状のほうが良い場合もありますし、そもそも現状に対する精確な理解がなければ提案も代案も意味がありません。

私たちは現状のなかに身を置いていますが、実のところ、それをうまく説明することができません。これは、母語を話せても、その文法を説明できないことに似ています。

社会を単純化してバッサリと切ってみせる発言は確かに痛快ですが、人間の社会は大変に複雑です。

求められるのは、複雑なものを複雑なままに理解することだと思います。そのためには、まず物事を一度分解し、その成り立ちを考えてみることが大切です。

そこを突き詰めていくことで、現状を理解し、課題に切り込む手がかりが得られるはずです。

※記事の内容は、執筆者個人の考え、意見に基づくものであり、明治大学の公式見解を示すものではありません。

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