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いまの国際課税では巨大プラットフォーマーに適正な課税ができない

最近、「デジタル課税」という言葉を耳にした人も多いと思います。GAFA(グーグル、アップル、フェイスブック、アマゾン)に代表される巨大プラットフォーマーに対して、従来の税制では納得のいく課税ができないという不満から、国際的に議論されている新しい課税の仕組みです。

一般の方には直接的な影響はないかもしれませんが、海外進出をしている日本の大企業は課税の対象となる可能性があり、またネット社会のあり方という観点からも関心をもっていただきたい問題です。

現在の国際課税の基礎は、1890年代にできたヨーロッパの租税条約にあります。この条約では、外国企業の事業所得に対して、その企業の事業上の施設がない国では課税しないというルールになっています。

事業上の施設とは、支店、工場、倉庫、事務所、建設工事現場などの、物理的施設を指します。この事業上の施設は、国際連盟のモデル租税条約作成のための会議で、1920年代から、Permanent Establishment(PE、恒久的施設)と呼ばれるようになりました。そして、「PEなければ課税なし」という、現在の国際課税ルールができあがりました。

企業の活動が多国籍化するようになっても、店舗での商品の販売やサービスの提供が行われていた時代は、まだ、このルールによって対応することができました。

ところが、インターネットが国境を越えて世界中に普及し、巨大プラットフォーマーと呼ばれる企業が現れると、膨大な数のユーザーがいる市場国が、その企業に対して満足な課税ができない事態となったのです。

なぜなら、インターネットを介して事業を展開するプラットフォーマーにとってのPEとは、支店やサーバーであり、支店もサーバーも置かれていない国は課税ができないからです。

例えば、プラットフォーマーは、ヨーロッパではサーバーを税率の低いアイルランドに置いています。すると、プラットフォームの利用者が何千万人といるフランスでは、それによって収益を上げているプラットフォーマーに対して課税ができないということになります。

さて、皆さんがフランスの税務当局者であったら、この状況をどう考えるでしょう。

自国を市場国として膨大な収益を上げている巨大企業に対して適正な課税をすることは当然であり、それは国民に対する、巨大企業の富の再分配なのだと、フランスは考えました。

フランスだけでなくヨーロッパの多くの国が(そしてアジアの一部の国も)そう考えたのです。そこで、新たな国際課税ルールとして、デジタル課税についての議論が始まったのです。

次回は、デジタル課税の議論について解説します。

#1 デジタル課税とは?
#2 なぜ、デジタル課税法はなかなか決まらないの?
#3 デジタル課税は世界統一ルールになる?
#4 デジタル課税は私たちに関係ない?

※記事の内容は、執筆者個人の考え、意見に基づくものであり、明治大学の公式見解を示すものではありません。

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