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AI時代にこそ、現物をよく観察し、本質を捉えよう

岩堀 豊 岩堀 豊 明治大学 理工学部 教授

いまやクリエイティブな職種に留まらず、多くのビジネスパーソンにとって発想力や企画力は必須のスキル。ライバルを一歩リードするのに役立つヒントを、知の先達である明治大学・教授陣の言葉から探ります。

教授陣によるリレーコラム/アイデアの泉【29】

私の研究室では航空機や宇宙機器等の設計製造技術に関する研究を行っていますが、研修の一貫として、研究室配属の4年生に壊れた航空機部品をスケッチさせています。

翼の部分にシワが寄ったり、剥離が起きたりしているのを実際の目で見ることが大事だと教えたかったのです。

出来栄えは決して上手ではありませんでしたが、学生たちが「こんなにモノをよく見たことはなかった」という感想を抱くほど、それぞれ熱心に対象物を観察しながらスケッチしていました。

これは見たものをあるがまま正確に描くという練習です。

工学を志す者にとってスケッチが研修になるとは思わないかもしれません。しかし、見たものを正確に描くことは実験で起きる現象の観察力を養うことであり、さらにどのような荷重がかかって壊れたのかを推定することで、設計に反映できる感覚を養うことにつながるのです。

現在、実験で起きる現象の多くは3Dによるシミュレーションの世界で表現できますが、実物を見てこれは壊れそうだと思える感覚や、設計の段階で最終的な破壊がどこで起きるのかを推定できることは技術者にとって大切です。

このスケッチを用いた研修は、私がやり始めたものではありません。古くは戦時中に数々の航空機設計に携わった山名正夫先生が本学で教鞭をとられた際、ミロのビーナスの像を学生たちにデッサンさせたことに始まり、山名先生の後を引き継いだ伊藤光先生の研究室でもデッサンの研修は行われました。

実は私も本学の卒業生であり、伊藤先生の研究室でデッサンをした一人です。社会人になり、会社や研究所で開発に携わった際には、現物をしっかり見ることの重要性を何度も味わいました。

意識して現物を観察することによって真実が見えてくることがあるのです。こうした体験の積み重ねこそが、新しい発想を生む源になるのではないでしょうか。

世間では、AI、IoT技術があればすべて推定できてしまうような、現物から遠ざかる風潮が強くあります。データ分析、効率の時代だということも確かではありますが、人間が現物をしっかり観察できる能力を失ってはならないと思います。

※記事の内容は、執筆者個人の考え、意見に基づくものであり、明治大学の公式見解を示すものではありません。

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