2024.03.21
- 2019年7月5日
- リレーコラム
#4 自己組織化を会社組織に応用できる?
山口 智彦 明治大学 研究・知財戦略機構 特任教授トップダウンではなく、社員をフラットにする会社運営
国家をひとつの組織と考えた場合、人類の歴史は、家族や部族から始まり、民族国家や都市国家に発展し、帝国主義があり、そして、国民国家といわれる時代になり、現代は、国家という概念が企業活動に変わっていく時代といえるかもしれません。
この変遷が、人類がより良い組織を求め続けてきたことの結果であるとすれば、自己組織化のメカニズムに理想の組織形態を見出すことができるかもしれません。
この連載の第1回で、自己組織化とは、「自分自身を勝手につくる」という意味合いだと述べました。企業をひとつの生き物と考えた場合、各部署は「器官」であり、各人は細胞といえるかもしれません。すると、各人が自分自身の判断をもとに独自に行動し、各部署の働きは自発的な進化を遂げ、なおかつ、各人の企業への帰属意識は高い、そんな組織形態があり得るでしょうか。
実は、日本の機械メーカーに、トップダウンの管理はなく、社員全員が毎日会議をしながら、活発なブレーンストーミングによって発案し、それを全体で共有しながら、各人がそれぞれの作業を行っていくという運営をしている会社があります。この組織スタイルは注目を集め、同じスタイルを取り入れる会社も出てきています。
この会社が注目されるのは、社員同士がフラットであることで、指示待ちではなく、一人ひとりが成すべきことを自覚し、それは一人ひとりのやる気を高めるとともに、その活動が多様性を組織にもたらしているからです。
例えば、誰かの活躍が会社の可能性を思わぬ方向に広げるかもしれません。そのような会社は、活力があるだけでなく、組織は硬直化せず、様々な外的変化にも対応する柔軟性をもつことができるようになります。まるで自己組織化のメカニズムをそのまま取り入れたような会社組織です。
日本社会が培ってきたモノづくりの伝統を踏まえて考えてみると、より良いモノを目指してとことん凝ることに価値を見出すとともに、そのモノが会社全体で高く評価されることが、強いモチベーションにつながるように思います。また、社員個人の中に湧き上がる達成感や向上心は、自ずと周囲の社員にも拡散していくでしょう。
社員のすべてがフラットな立場で、経営者の目線で会社経営の理念や価値観を共有していると、社員の発案で人員配置をいつでも最適化できる機動性がうまれ、ひいては環境変化への適応性も獲得できるでしょう。
こう考えると、自己組織化における個と全体のメカニズムを会社経営に応用することは可能であり、人類が目指し続ける理想の組織は、生物そのものがもっている自己組織化にあるのではないかとも思えます。
こうした組織づくりは、比較的少人数の会社やベンチャー企業は取り入れやすいと思います。大企業でも、部署やプロジェクトチームなどの単位で取り入れていくことが可能ではないかと思います。
#1 「自己組織化」って、なに?
#2 自己組織化は数式化できるの?
#3 自己組織化は経済に応用できる?
#4 自己組織化を会社組織に応用できる?
※記事の内容は、執筆者個人の考え、意見に基づくものであり、明治大学の公式見解を示すものではありません。