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魂の言葉から、生きる勇気と希望を感じ取ろう

明治大学 研究・知財戦略機構 特任教授 纐纈 厚

ときに人生の指針となり、仕事のヒントとなり、コミュニケーションツールの一助となる「読書」。幅広い読書遍歴を誇る明治大学の教授陣が、これからの社会を担うビジネスパーソンに向けて選りすぐりの一冊をご紹介。

教授陣によるリレーコラム/40歳までに読んでおきたい本【1】

エメ・セゼール『帰郷ノート/植民地主義論』(砂野幸稔訳・平凡社・1997年)

私は書斎の手の届く場所に、エメ・セゼール(Aimé Fernand David Césaire ,1913~ 2008)の『帰郷ノート/植民地主義論』を置いています。シュルレアリズムの巨匠ブルトンが「偉大なる黒人詩人」と讃えたセゼールは、高名な詩人にして、ネグリチュード(黒人性)運動を主導し、植民地主義を批判してきた政治家でもありました。

本書の醍醐味は、「暁の果てに・・・行ってしまえ、とぼくは奴に言っていた。ポリ公面(づら)め、イヌの面(づら)め、行ってしまえ、ぼくは秩序の下僕と希望のコガネムシが大嫌いだ」で始まる『帰郷ノート』で堪能できます。怒りと希望が交差しながらも、果てしない人間への愛を語るセゼール。何が真理なのか曖昧化する現代社会にあって、語ること、書き込むことを通して、人間愛を喪失状況に追い込んでいく全ての権力への憎しみと、そこから解放されるための勇気がどこにあるかを明示しています。

また、セゼールの特筆すべき点に「伝える力」があります。文学という世界で魂を言葉に代えて表現し、貧困のため進学のできない人や文字の読めない人、目の不自由な人にも、想いを届けられるようなエネルギーを持っています。私はかつてゼミの学生たちにも薦めていましたが、最初のうち若い人は読んでもピンとこないかもしれません。自分の魂が自覚できるような段階になって、初めてセゼールの語りに合点がいくのです。私が初めて読んだのは大学生になったばかりのときでしたが、60半ばを過ぎた今でも、セゼールと響き合っています。本書を読み返していると、不思議なことに人に温かく接せられるように思います。

※記事の内容は、執筆者個人の考え、意見に基づくものであり、明治大学の公式見解を示すものではありません。

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