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自分自身を勝手につくる。それゆえ多様性のある形をつくることができる

近年、「自己組織化」の研究が注目されています。しかも、その分野は、生物学や材料科学をはじめ、経済や社会学など、多岐にわたっています。

様々な分野に応用される「自己組織化」研究ですが、では、そもそも「自己組織化」とはなんなのかというと、意外と知られていないようです。その基本を抑えることができれば、それは、私たちの身近な問題解決にも役立つものだと思います。

自己組織化、すなわち「Self Organization」という言葉を学術論文で初めて用いたのは、1947年、ウィリアム・ロス・アシュビーというアメリカの脳・神経生理学の研究者です。つまり、脳のシステムや機能を捉える言葉だったわけです。

ところで、この「Self Organization」は、日本語で「自己組織化」と言いますが、日本語で言う「自己組織化」と「Self Organization」の意味合いはちょっと異なります。

まず、日本語で「組織」と言えば、社会や企業などの組織を思い浮かべがちです。が、ここでいう「Organization」とは、生物学でいうところの「Organ」、すなわち「器官」を指します。

つまり、「Self Organization」とは、「自ら器官化していく」「自ら体組織化していく」といった意味合いです。日本語では、「自分自身を勝手につくる」といえば、もともとの意味に近いイメージだと思います。

また、「組織化」していくということであり、できあがった形や組織を指すのではなく、できあがっていくプロセスを指す言葉なのです。

このように、もともと生物学で始まった言葉ですが、やがて私たちの身の回りの現象にも応用できることがわかっていきます。

よく知られているのが、雪の結晶でしょう。多くの人が六角形状の美しい形をイメージすると思いますが、実は、雪の結晶には実に様々な形があります。

そもそも、雪の結晶は水の分子のみが集まってできたものですが、同じ水の分子が同じように繋がり合いながらも、雪の結晶の多様な形は水分子の構造から予測することはできません。水分子の形自体はとても単純で、そこに雪の構造の多様性が潜む余地はないのです。

このように、温度の変化をきっかけとして、自分のいる環境を水分子が感知して自動的かつ勝手に集合し、自分よりもずっと大きな雪の結晶をつくる、そこには司令塔がないゆえに多様性をもった雪の結晶ができあがる、このようなプロセスが自己組織化ということになります。

まず、こうした点を踏まえることで、生物学から始まり、その後、物理学や数学が解明していく自己組織化のメカニズムを身近に応用しやすくなるのではないかと思います。

次回は、物理学や数学は自己組織化をどのようにとらえているかを解説します。

#1 「自己組織化」って、なに?
#2 自己組織化は数式化できるの?
#3 自己組織化は経済に応用できる?
#4 自己組織化を会社組織に応用できる?

※記事の内容は、執筆者個人の考え、意見に基づくものであり、明治大学の公式見解を示すものではありません。

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