
2021.04.07
明治大学の教授陣が社会のあらゆるテーマと向き合う、大学独自の情報発信サイト
2013年に改正高年齢者雇用安定法が施行され、60歳定年制のある会社でも、65歳まで継続的に勤務できるようになりました。この政策がとられた理由は大きく2つあります。
ひとつは、少子高齢化によって日本の人口が極端に減っていくことです。いまは約1億3千万ですが、2046年には1億を割り込み、さらに減り続け、一説では2100年には4千万くらいになるといわれています。
4千万といえば、今の3分の1です。現代の日本の社会体制を維持するには人口1億が必要といわれていますから、4千万では絶望的です。
そこで、外国人労働者を受け入れたり、AIやロボットで省力化する施策が考えられていますが、私たち自身が長く働くことも対策の一つなのです。
もうひとつの理由は、私たちの寿命が延びていることです。といっても、寝たきりが増えているのだろうという人が多いのですが、それは違います。
75~79歳の人の歩くスピードが、ここ10年間で11歳若返っているというデータがあります。つまり、健康寿命も延びているのです。
私も実際に調査して把握していますが、60歳で定年してただ家にいる人は、なにもすることがない生活に、どうしてよいのかわからなくなっています。
いま、現役の若い世代は、60歳を過ぎて働くのは嫌だという人が多いですが、実際、60歳で定年した人たちは、なにか仕事をしたり、社会参加をしたいと希望します。むしろ、やることがあるという人の方が、幸せなのです。
日本で定年制度が定着したのは1950年代ですが、そのときの定年は55歳でした。ちなみに、その頃の男性の平均寿命は58歳だったのです。
定年制度とは、会社を辞めさせる制度というより、むしろ、終身雇用を保証する制度だったわけです。
世界に目を向けると、定年制度は珍しい制度です。年齢を理由に退職させることは差別で、違法と捉えられているのです。
元気で、働く意志があるのに、働く機会を年齢によって一律に奪うことは、そもそも、問題のある制度ともいえるのです。
次回は、継続雇用の問題点について解説します。
#1 なぜ、定年過ぎても働かなくてはいけないの?
#2 継続雇用でみんなハッピーなの?
#3 どうすれば再雇用に成功するの?
#4 能力があれば誰でも必ず活躍できる?
#5 社会人になっても勉強しなくてはダメ?
#6 高齢者も働きやすい社会になる?
※記事の内容は、執筆者個人の考え、意見に基づくものであり、明治大学の公式見解を示すものではありません。