
2021.03.03
明治大学の教授陣が社会のあらゆるテーマと向き合う、大学独自の情報発信サイト
ときに人生の指針となり、仕事のヒントとなり、コミュニケーションツールの一助となる「読書」。幅広い読書遍歴を誇る明治大学の教授陣が、これからの社会を担うビジネスパーソンに向けて選りすぐりの一冊をご紹介。
伊藤邦雄『新・現代会計入門〔第3版〕』(日本経済新聞出版社・2018年)
中田裕康『契約法』(有斐閣・2017年)
矢島文夫訳『ギルガメシュ叙事詩』(ちくま学芸文庫・1998年)
Meiji.netの読者層であるビジネスパーソンにとって、今後の飛躍を目指すためには会計学と法律学の知識の獲得が欠かせません。以下、多少の時間的余裕がある場合に読んでいただきたい本を2冊挙げます。
会計学の領域では、『新・現代会計入門〔第3版〕』でしょうか。会計における制度、理論、最新の実務や事例をすべて網羅し、企業活動への影響を多面的にとらえた一冊です。
法律学について考えてみると、ビジネスパーソンにとって身近であり、かつ法律学の体系上も重要なのは、民法学、とりわけ契約法学ではないでしょうか。
民法・契約法の本は多数出版され、良書も多いなか、法律学の発想(センス)や考え方、その他さまざまな要素が凝縮された傑作といえるのが『契約法』です。
この2冊は学習書であるものの、相当に歯ごたえがあり、簡単には読みこなせません。分量も、前者は700頁、後者は600頁を超えます。
しかし、読めば、会計学も法律学も、根源的で深い思考に裏打ちされていることが分かるはずです。ビジネスパーソンの力量のみならず、人間としての力量を向上させること請け合いの好著です。
最後に、会計や法律とは直接には関係のない、人の「生き方」にかかわる本をご紹介します。古典の中の古典、この世界で一番古い文献といわれる『ギルガメシュ叙事詩』です。
メソポタミアの英雄・ギルガメシュを主人公にしたストーリーで、その起源は遥か5千年前のシュメールの時代にまで遡ります。この物語については、おそらく無数の研究があり、その快楽的・刹那的な発想に対する批判も多々あると思います。
しかし、ここに登場する人物は、現在を生きている私たちと、姿・形はもちろん、心もおおよそ同じ人間です。数千年前の人々も、今の私たちと共通/共感する考えを持っていた。そのことに、一種の安堵感を覚えます。
文明は発達しても、人間の生き方自体はさほど変わらないのかもしれない。こうした普遍性に気づくきっかけとして、この本を読んでみるのはいかがでしょうか。
※記事の内容は、執筆者個人の考え、意見に基づくものであり、明治大学の公式見解を示すものではありません。