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#5 サイトブロッキングの実効性は低い?

明治大学 法学部 教授 丸橋 透

私たちみんなが知恵を絞り、より実効性の高い方法を実行することが重要

政府は、今回の海賊版サイト対策のサイトブロッキングが緊急避難であり、今後は法整備を目指すといっています。当然、国会で議論されることになりますが、私たち国民も注視していかなければいけません。まずは、海賊版サイト等悪質な著作権を侵害するサイトに対してどのような対策を講じるべきか、というトータルな議論があるべきで、サイトブロッキングありきの議論であってはなりません。その議論の中で、どうしてもサイトブロッキングが必要ということになれば、権利者の意見だけでなく、通信事業者や、私たちユーザーの意見も取り入れられた、みんなが納得するものにしていかなければなりません。特に、緊急避難の要件でも説明した③法益権衡は、私たち国民の権利と自由に関わる重要なポイントです。私たちにとって、決して他人事ではないのです。

また、実効性の面を考えても、実は、サイトブロッキングには問題が山積みなのです。例えば、サイトブロッキングのリストを作成する組織は第三者機関にするのか(その場合だれが運営費を出すのか)、裁判所にするのか、行政府側にするのか(それは相当にハードルが高い)。裁判所なりがサイトブロッキングの命令を出すとしても、国内の全ISPに出せる(効果を及ぼせる)のか。違法サイトが、ブロッキングされたドメイン名を次々別のものに変えていくことに対応し続けられるのか。オーバーブロッキングのクレームを受け付ける仕組みはどうするのか。

こうした点を考えると、もっと、すぐにできることがあります。例えば、海賊版サイトの収入源は広告料収入です。広告配信事業者の海賊版サイトへの広告表示に自主的な規制をかけるためには、広告主が海賊版サイトに広告表示されることを拒否することが効果的です。そのためには、配信レポートを高度化し、どんなサイトに表示されたか広告主がすぐに確認できるようにするとともに、海賊版サイトに広告表示される企業はイメージダウンになることを、私たち消費者が示すことも必要です。また、そもそも、ネットユーザーである私たちが海賊版サイトを閲覧しないことが重要です。アクセス数が少なければ、広告料収入のビジネスモデルが成り立たなくなります。そこで、青少年への周知啓発とともに、フィルタリングを徹底することも有効です。もちろん、青少年だけでなく、私たち大人も考えるべきです。海賊版サイトが蔓延すれば、出版産業が打撃を受けますが、さらに、権利者でもありクリエイターでもある漫画家も育たなくなってしまいます。私たちが漫画文化を危機に陥れてしまうわけです。そういった意味では、むしろ、個々のクリエイターを支援する国の仕組みなりが、今後は重要になるでしょう。

つまり、クリエイターと漫画に関連する産業、市民、インターネット事業者などすべてのステークホルダーの代表者と、政府や、法律や技術の研究者が知恵を絞って、海賊版サイトの撲滅について建設的な熟議を重ねること、そして正規版を便利に適正な対価で享受できるサイクルを作成維持できる環境を整えることが最も望ましい出口になる、と考えます。

#1 サイトブロッキングってなに?
#2 サイトブロッキングは違法行為?
#3 サイトブロッキングに正当性はない?
#4 アメリカはサイトブロッキングをしない?
#5 サイトブロッキングの実効性は低い?

※記事の内容は、執筆者個人の考え、意見に基づくものであり、明治大学の公式見解を示すものではありません。

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