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#2 サイトブロッキングは違法行為?

明治大学 法学部 教授 丸橋 透

「通信の秘密」、「検閲の禁止」、「表現の自由」に抵触する

今回の海賊版サイトのブロッキングに対して、有識者やインターネット関係団体などは「通信の秘密」、「検閲の禁止」、「表現の自由」に抵触すると訴えています。その理由は、まず、サイトブロッキングの技術的な仕組みにあります。

サイトブロッキングを実行するためには、実は、海賊版サイトを閲覧しようとするユーザーだけではなく、インターネット接続サービス事業者(ISP)の全てのユーザーのURL やIP アドレスと呼ばれる通信の宛先情報を監視し、ブロッキングするためのリストと照合することになります。つまり、海賊版サイトにアクセスしようとするユーザーだけではなく、ISP の全ユーザーの全てのアクセス先が常時監視されることになるのです。そうしなければ、サイトブロッキング対象の海賊版サイトを特定する宛先情報と照合できないからです。その結果、否応なく対象ユーザー全員の「通信の秘密」が侵害されることになるわけです。この通信の秘密は、国家による検閲と通信の秘密の侵害を禁じた憲法21条2項に基づき、電気通信事業法で刑罰を科すことにより守られているのです。

さらに、表現の自由の侵害とは、著作権侵害コンテンツをアップすることも表現の自由であるから守るべき、などという話では決してありません。表現の自由とは、私たちが知りたい情報を知る権利でもあるのです。上記のような仕組みでサイトブロッキングが行われていることを知ると、ネットユーザーにチリング・エフェクト(chilling effect)、いわゆる萎縮効果が生じ、閲覧したいサイトに自由にアクセスしづらくなります。それも表現の自由の侵害なのです。また、サイトブロッキングされたサイトが著作権侵害のデータばかりではなく、合法なデータの閲覧やダウンロードも可能にしていた場合、その合法データまでもがアクセスできなくなります。これをオーバーブロッキングといいます。まさに表現の自由を侵害することになるわけです。

このように、法律に抵触したり、一般市民の権利を侵害したりする問題を含むサイトブロッキングですが、政府は今回、緊急避難の要件を満たし、成立し得るとしました。

次回は、サイトブロッキングの緊急避難の要件について解説します。

#1 サイトブロッキングってなに?
#2 サイトブロッキングは違法行為?
#3 サイトブロッキングに正当性はない?
#4 アメリカはサイトブロッキングをしない?
#5 サイトブロッキングの実効性は低い?

※記事の内容は、執筆者個人の考え、意見に基づくものであり、明治大学の公式見解を示すものではありません。

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