
40歳までに読んでおきたい本幅広い知識を身につけ、本質を見極める目を養おう
教授陣によるリレーコラム/40歳までに読んでおきたい本【10】
西尾 幹二『ヨーロッパの個人主義』(講談社現代新書・1969年)
人それぞれの生き方、考え方もありますので一概に「これ」という本は挙げられないのですが、私の経験からすると固いものでも柔らかいものでも片っ端から読んでみることをおすすめします。特に若い人は活字離れと言われて久しく、読書する機会が減っていると思いますので。
私の専門の法律は、社会のことを把握していないと充分理解できないため、自分自身は専門分野の本はもちろん、哲学書から思想書、評論、小説など、興味の赴くまま幅広いジャンルのものを読んできました。いま思い返してみると自分の血となり肉となっているように感じます。なかでも、大学院時代の同輩にすすめられて読んだ『ヨーロッパの個人主義』には当時とても感銘を受けました。ニーチェ研究者である西尾氏が、自身のヨーロッパ経験を通して、日本人の考え方を批判的・懐疑的な視点から指摘しています。本書を最初に読んだときには自分の考え方がひっくり返され、無知を自覚しました。いまもなお影響を受けている本です。
人から私の著書に「一筆お願いします」と言われたときは「権威を疑え」と書くようにしています。権威を無批判に信用してしまうのではなく、自分で考えることが大切だからです。若い人には通説や判例が正しいことを前提として議論するのではなく、それ自体が正しいのかどうか疑って考えて欲しいと思います。そのような目を養うためにも自分の専門外の本から多くのことを吸収するようにしましょう。
※記事の内容は、執筆者個人の考え、意見に基づくものであり、明治大学の公式見解を示すものではありません。