明治大学の教授陣が社会のあらゆるテーマと向き合う、大学独自の情報発信サイト

“大衆”に甘んじず、自ら考え、世界を広げよう

明治大学 法学部 准教授 星野 茂

ときに人生の指針となり、仕事のヒントとなり、コミュニケーションツールの一助となる「読書」。幅広い読書遍歴を誇る明治大学の教授陣が、これからの社会を担うビジネスパーソンに向けて選りすぐりの一冊をご紹介。

教授陣によるリレーコラム/40歳までに読んでおきたい本【23】

オルテガ・イ・ガセット『大衆の反逆』(神吉敬三訳・ちくま学芸文庫・1995年)
ミヒャエル・エンデ『はてしない物語』(上田真而子・佐藤真理子訳/岩波書店・1982年)

『大衆の反逆』は、スペインの哲学者オルテガ・イ・ガセットが、20世紀初頭に“大衆”という現象の出現とその功罪を論じながら、“選ばれし少数者”という概念を対置した警世の書です。

“大衆”とは、自分がみんなと同じだと感じることに苦痛を覚えず、他人と自分が同一であると感じてかえっていい気持になる人々のことです。反対に“選ばれし少数者”とは、自分で学び、考え、行動し、発言するような人々を指し、ただ迎合していくだけの大衆とは異なります。

原書が刊行されたのは90年ほど前ですが、現代でも十分通用する本だと思います。逆に言うと、オルテガが書いたレベルまで我々が達していないというのが問題です。

オルテガはEUができるずっと前からヨーロッパ合衆国という概念を持っており、大学生ぐらいのときに本書を初めて読んだときは「こんなことを言っていた人もいたのだ」と感銘を受けました。

2冊目に挙げたのは、映画「ネバーエンディング・ストーリー」の原作、児童文学の『はてしない物語』です。この本は映画化されるよりも以前に心理学者の方からすすめられて読みました。“虚無”に侵され滅亡しかかっている物語の中の世界を、想像力あふれる人間の少年が救おうとする話です。

「虚無って何?」「人はどういうことをすると無になってしまうのか」が描かれるなか、想像力を働かせ、自分で物事を考えていくことの大切さが説かれています。

ただし、考えることをやめてしまうと空想の世界に行ったきり、現実世界に帰ってこられなくなる人もいます。オルテガの話に例えると、「任せておけばいいや」と一生大衆で終わってしまうのです。

若い方には、自分で考えて社会を広げていけるような、選ばれし少数者になって欲しいと思います。

※記事の内容は、執筆者個人の考え、意見に基づくものであり、明治大学の公式見解を示すものではありません。

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