明治大学の教授陣が社会のあらゆるテーマと向き合う、大学独自の情報発信サイト

的確な情報を行動に役立てることが大切

金融危機のきっかけは様々ですが、問題は、そこに不安や疑心暗鬼を生む人の心理にあると述べてきました。つまり、金融危機は人が創り出しているのであり、そのため、そこに自然現象のような特定のメカニズムを見出すことは非常に難しいと思います。なぜ、これが金融危機に繋がったのか、なぜ、これが原因で株価が一斉に下がったのにまた戻ったのか。後からであればその説明もできますが、その渦中にあるときは、手出しすらできないのが実状です。しかし、不安や疑心暗鬼の心理を生む大きな原因がわからないならば、周囲の情報を常に的確に捉えることが重要になります。そして、みんながやっているから大丈夫だろうとか、みんなが売っているから自分も売った方が良いだろう、などと考えるのではなく、捉えた情報を基に自分なりの解釈と判断を行っていくことがとても大切であり、それが金融危機を防ぐことに繋がっていくのではないかと思います。

その意味で、私たち研究者が的確な情報を提示していくことが重要な課題だと考えています。しかし、金融や経済の世界のデータは膨大で、しかも複雑です。正確なデータをただ並べたからといって、それで的確な情報になるわけではありません。例えば、極端に大きな数値がある場合、単純に平均を取ると、その値に引っ張られて他方の影響を過小評価することになってしまうこともあります。市場の動向を適切に表現する指数などを作るときには、実状を反映するために統計的手法に基づくデータ処理の方法が必要になるのです。

いま、私は、文科省に採択された本学の「私立大学研究ブランディンク事業」の金融プロジェクトに関わっています。ここでは、汎用性のある統計的なデータ処理の手法の開発も行っています。こうした分析手法により、一般の方々にもわかりやすいグラフなどにまとめたアップ・トゥ・デートな情報を随時公開することを進めていきたいと考えています。現在は私のホームページで公開しており、英語バージョンですが、日本語バージョンも作成していきたいと考えています。こうした情報が社会に役立つことを願っています。

田野倉葉子のホームページ
http://www.isc.meiji.ac.jp/~tanokura/

私立大学研究ブランディング事業
http://www.meiji.ac.jp/koho/math-everywhere/

#1 金融危機はなぜ起こるの?
#2 リーマン・ショックはなぜ起こったの?
#3 金融危機はなぜ世界に波及するの?
#4 金融危機を防ぐことはできる?

※記事の内容は、執筆者個人の考え、意見に基づくものであり、明治大学の公式見解を示すものではありません。

連載コラムの関連記事

世代間のギャップこそ新時代へのヒントにしよう

2020.8.6

世代間のギャップこそ新時代へのヒントにしよう

  • 明治大学 国際日本学部 特任教授
  • 沼田 優子
世代や知識を問わず、様々な人の話を聞いてみよう

2020.7.30

世代や知識を問わず、様々な人の話を聞いてみよう

  • 明治大学 農学部 専任講師
  • 瀬戸 義哉
メモを取るのをやめて、思考を突き詰めてみよう

2020.7.27

メモを取るのをやめて、思考を突き詰めてみよう

  • 明治大学 総合数理学部 教授
  • 小松 孝徳
#5 私たちにできることとは?

2020.7.17

#5 私たちにできることとは?

  • 明治大学 経営学部 教授
  • 塚本 一郎
疑問や課題をメモにして整理し、可視化しよう

2020.7.16

疑問や課題をメモにして整理し、可視化しよう

  • 明治大学 経営学部 教授
  • 原田 将

Meiji.netとは

Meiji.net英語版

特別授業

新着記事

2020.08.05

人口変動と人びとの歴史を結わえること

2020.07.29

お金について学ばないことで失う機会は大きい

2020.07.22

人類の危機を救う植物の秘めた力を解き明かす

2020.07.15

人の生活を助けるロボットの普及を妨げているのは、「人」である

2020.07.08

ブランド価値の向上が日本企業の課題

人気記事ランキング

1

2020.04.01

歴史を紐解くと見えてくる、台湾の親日の複雑な思い

2

2017.10.18

ゲーテッド・コミュニティの実態に迫り、その“可能性”を探る

3

2020.08.05

人口変動と人びとの歴史を結わえること

4

2020.07.29

お金について学ばないことで失う機会は大きい

5

2017.10.04

精神鑑定は犯人救済のために行うのではない

Meiji.net注目キーワード

【注目!】連載コラム