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没後100年を迎えた夏目漱石のテキストを 「都市空間」の観点から読む

明治大学 文学部 教授 佐藤 義雄

作家の世界観と“認知地図”的空間

佐藤 義雄  文学テキストの背景として現われる都市の境界に視線を向けることは、その作家にとっての“生きられた都市”を味わうことであり、これも読書の大きな愉しみです。

 夏目漱石より少し前の世代に、末広鉄腸という作家がいました。1986(明治19年)年に発表した「雪中梅」という政治小説の中で、漱石が代助を通して嫌悪感を現わした工場の煙を、素晴らしい工業国日本の象徴のような捉え方をしています。東京の捉え方のこの大きな差異は、時代の違いでもありますが、同じ都市の光景を見て、作家一人ひとりの歴史や思いから生まれた“認知地図”の相違でもあります。それは、作家個々の認知によって生まれた空間です。テキストの空間は、作家の認知地図的な空間と捉えることができるのです。

 いま、街歩きがちょっとしたブームです。ガイドブックを持って街を歩くことも結構ですが、私にはお仕着せの街歩きのように見えます。想像力を無限に広げてくれる文学テキストによって膨らんだイメージを持って、街を歩いてみてください。いままで見慣れていたように思っていた街の風景が、新たな表情を見せてくれるかもしれません。

 私は、明治大学リバティアカデミー(学外向けの講座)で「都市空間を歩く」という講座を16年前から毎年続けています。ご関心がおありでしたら、「読むこと」と「歩くこと」を重ね合わせながら、一緒に近代日本の文学テキストを読み直してみませんか。

■リバティーアカデミー講座「都市空間を歩く」(2016年5月7日~7月2日、土曜午後)
https://academy.meiji.jp/course/detail/2987/

>>英語版はこちら(English)

※記事の内容は、執筆者個人の考え、意見に基づくものであり、明治大学の公式見解を示すものではありません。

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