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18歳選挙権の背景と間接民主制の危機 ―求められる公民としての資質―

井田 正道 井田 正道 明治大学 政治経済学部 教授

若者の政治離れを止められるか

 ――選挙権年齢引き下げのそれら背景・理由は、実際、今の政治・選挙に有効なものなのでしょうか。

グローバル・スタンダードに合わせるという観点についてはまったく異論はありません。しかし、それ以外の理由に関しては懐疑的です。選挙権年齢を18歳に引き下げることで若年層の政治的影響力を高めることは困難と言わざるを得ません。18歳から19歳の人口が有権者全体に占める割合は3%にも満たない状況です。この程度の比率で、候補者や政党の政策が変わるとは思えません。また、政治・公共教育への意義も多くは期待できません。たとえば、アメリカで1970年代以降に選挙権が付与された18歳から20歳(それまで選挙権年齢は21歳)の層の投票率は有権者全体の投票水準を大きく下回っています。すなわち、今回の「18歳選挙権」が若者の政治的関心の起爆剤になるとは思えず、また、現在の日本の政治・選挙風土にインパクトをもたらすとは思えません。
アメリカについて付言しておきますと、70年代のアメリカの選挙権年齢引き下げは、徴兵制や当時のベトナム戦争と密接な関係があります。徴兵されてベトナムで多くの若者が犠牲になる状況の中、若者の意思を政治に反映することが必要と考えられ、選挙権年齢が引き下げられました。ちなみにアメリカは徴兵制度を廃止し志願兵制度に転換したことで、若者の政治離れが急速に進んでいます。

直接民主制への志向

 ――「18歳選挙権」のみならず、先の「大阪都構想」の住民投票など、日本の民主政治が変容しつつあるように思えます。先生はどのようにお考えでしょうか。

昨年の総選挙の年齢別投票率で20代前半の投票率が初めて3割を切りました。20代前半の若者では、選挙に行く方がマイノリティとなっています。投票率が高ければ高いほど、投票結果の正当性が担保されるのが代表民主制であることを考えれば、3割に満たない投票率は由々しき問題と言わざるを得ません。いわば、代表民主制、間接民主制の機能低下という事態が起こっているわけですが、同時に直接民主制の志向が見られるのが注目されます。これは世界の先進民主主義の国に起こっている現象で、たとえばイギリス・スコットランド独立に関する住民投票が世界の注目を集めました。先のイギリスの総選挙ではスコットランド民族党が大きく躍進しました。
日本においては「大阪都構想」に関して住民投票が行われました。住民投票は民意が直接反映されるものですが、今回の場合、問題は果たして住民が「大阪都構想」を本当に理解していたかということです。本来は、政策のプロである間接民主制で選ばれた政治家が議論を尽くすべきだったのではないか。90年代の市町村合併の際の住民投票は有効でしたが、争点によっては、住民投票という選択が誤った結果を導く可能性があることは踏まえておく必要があると思われます。また、間接民主制の根本を成す選挙の意味が低下している現象もあります。数年前、ニューヨークのウォールストリートで、経済格差の解消や雇用の改善を訴えた大規模なデモがあり、それは世界的に注目されましたが、デモのような直接行動の中には選挙よりも世界にアピールする力が強いものもあります。

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